メトホルミン使用はDPP-4阻害薬が心血管アウトカムに及ぼす影響を緩和できるかもしれない(メタ分析; Diabetes Care 2017: Charge)

Metformin Use May Moderate the Effect of DPP-4 Inhibitors on Cardiovascular Outcomes.

Crowley MJ et al.

Diabetes Care. 2017.

PMID: 29051159

【目的】

メトホルミン使用がジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤(DPP-4i)の心血管作用に対する潜在的モデレーターであるか探索する。

【方法および研究デザイン】

DPP-4i使用による 3-point MACEへの影響を検討した臨床試験についてメタ分析を行った。 DPP-4iの心血管作用が、メトホルミン使用者と非使用者とで異なるかを検討するためにメタ回帰(分析)を用いた。

【結果】

DPP-4iとメトホルミンを使用しているグループでは、心血管アウトカムのハザード比[HR] は 0.92、95%信頼区間[95%CI]は 0.84~1.01であった。一方、メトホルミン非使用グループでは、HR =1.10 [95%CI 0.97~1.26]であった。

メトホルミン使用者と非使用者のサブグループ解析において、DPP-4i使用による効果の差は、統計的に有意であった(P = 0.036)。

【結論】

PP-4i使用による心血管アウトカム増加に対し、基礎治療としてのメトホルミン使用は緩和効果を有する可能性がある。

仮説生成分析は、DPP-4i使用が心血管アウトカムに及ぼす影響について、依然として不確実性が存在していること(併用薬に依存すること)を示唆している。

【コメント】

アブストのみ。

著者も述べていますが、本結果は ”仮説生成” です。過去の RCTやメタ解析において DPP-4i使用による心不全増加の懸念が報告されていますが、心不全を増やさないとする報告もあります。

個人的には薬剤間で安全性に差異があると捉えています。また過去の臨床試験結果をみてみると、基礎治療にはほぼメトホルミンが使用されています。個人的には DPP-4i単独で使用する意義は分かりません。続報を待ちます。

 

 

 

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カナグリフロジンは 2型糖尿病患者の心血管・腎イベント発生を抑制できますか?(CANVAS program; NEJM 2017; Free→charge)

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.

N Eng J Med. 2017 Jun 12. doi: 10.1056/NEJMoa1611925. [Epub ahead of print]

Neal B et al.

PMID: 28605608

ClinicalTrials.gov No.: NCT01032629(CANVAS), NCT01989754(CANVAS-R)

 

【資金提供】

Janssen Research and Development

 

【利益相反COI or 開示disclosure】

http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1611925/suppl_file/nejmoa1611925_disclosures.pdf

【統合解析方法のペーパー】

Optimizing the analysis strategy for the CANVAS Program: A prespecified plan for the integrated analyses of the CANVAS and CANVAS-R trials. – PubMed – NCBI

PMID: 28244644

試験背景

カナグリフロジン(商品名:カナグル)は、糖尿病患者の血糖値、体重、およびアルブミン尿を減少させるナトリウム – グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害剤である。
心血管、腎臓、および安全性アウトカムに対するカナグリフロジン治療の効果を報告する。本論文は、CANVASおよび CANVAS-Rという 2試験の統合結果である。

結論

カナグリフロジンはハイリスク 2型糖尿病患者の心血管および腎イベントを抑制した。ただし日本での承認用量と異なる点、セカンダリアウトカムであっても下肢切断のリスク増加については慎重に検討する必要がある。従って同クラスの他の薬剤より優れているとは言いがたい。


組入基準

HbA1c 7.0~10.5%の 2型糖尿病の男女、30歳以上で症候性アテローム性心血管疾患を有しているか 50歳以上で心血管疾患リスク(糖尿病罹患10年以上、収縮期血圧 140 mmHg以上で降圧薬を 1つ以上使用、喫煙、微小アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿、あるいは HDLコレステロール 1 mmol/L=38.7 mg/dL未満)を 2つ以上有す患者、eGFRが 30 mL/min/1.73 m2以上 etc.

除外基準

糖尿病性ケトアシドーシスの既往、1型糖尿病あるいは膵細胞移植、膵炎あるいは膵臓切除による糖尿病、スクリーニング前に治療薬および用量が少なくとも 8週間安定していない患者、ベースライン/Day1時の空腹時血糖 270 mg/dL(15 mmol/L)超あるいはスルホニルウレア剤またはインスリン使用中の患者の場合は空腹時血糖 110 mg/dl(<6mmol/L)未満、スクリーニング前 6ヶ月間に 1回以上の重症低血糖の既往 etc.


批判的吟味

RobotReviewerによる Risk of Bias Table

f:id:noir-van13:20170825192907p:plain

PICOTS

P: 心血管ハイリスク 2型糖尿病患者(罹患期間は平均 13.5 ± SD7.8年

I :標準治療へのカナグリフロジン(商品名:カナグル)追加

CANVAS trial

→ カナグリフロジン 300 mg/day、100 mg/day、placeboの 3群

CANVAS-R trial

→ カナグリフロジン 100 mg/day(12週以降 300 mgまで増量可)の 2群

 ※300mgまで増加した患者は71.4%

 ※日本での承認用量は 100 mg/dayまで(2017年9月時点)

C: 標準治療への Placebo追加

O: Primary — 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合

Secondary — ①全死亡、②心血管死、③アルブミン尿の進行(30%以上のアルブミン尿の増加および、正常アルブミン尿からの微小アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿への増悪、微小アルブミン尿からの顕性アルブミン尿への増悪)、④心血管死および心不全による入院の複合

T: 予防・治療、ランダム化比較試験、追跡期間 =188.2週(3.9年)

S: アジア-太平洋、北アメリカ、ラテン系アメリカ、ヨーロッパ諸国、その他

    30ヵ国、667施設(少なくとも約20%がアメリカから参加と推定)

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

→ されている。Interactive Web Response System(IWRS)を採用

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?

→ されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする(本文 Figure 1A参照)。2週間の run-in期間は single-blind(患者のみ)

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

→Concealmentの記載はないが、IWRSを採用していることから隠蔽化されていると判断(中央割付)。トライアルスポンサーであるヤンセンが実施しているところが少し気になる(気にしすぎ?)

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

→ 真であるが複合であるため結果の解釈に注意が必要

交絡因子は網羅的に検討されているか?

→ 概ねされている

Baseline は同等か?どんな患者背景?

→ 同等と判断。心血管疾患既往が 65.6%とハイリスクな集団であると考えられる。利尿薬の使用患者が 44.3%という点が個人的には気になる。内訳も知りたい。

ITT 解析されているか?

→ されている。

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

→ ITT解析であるため追跡率100%

試験完遂率はカナグリフロジン群 96.1% vs. placebo群 95.7%と同等

脱落は全体で4.19%(184+224 / 4163+5571)と問題なさそう。

サンプルサイズは充分か?

→ 心血管セーフティ検討のために 688例のイベント発生が必要(β =90%パワー、αレベル =0.05)。しかしプライマリーアウトカムのイベント発生数は、CANVASでは 658(425+233)と足りず、CANVAS-Rを合わせた CANVAS program全体としては 1,011と充分。

→当初の計画では、CANVAS試験のみで 18,000例を予定していたが、第一段階の組入れ後に試験スポンサーが第二段階の被験者募集を中止することを決定した。そこで代替案として、アウトカムを腎臓病等に変更し、イベント発生抑制効果を検討する CANVAS-R試験を新たに計画した。

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f:id:noir-van13:20170903134225p:plain

(Study Design Figures. Major study heralds new era in treatment of type 2 diabetes: CANVAS results available | The George Institute for Global Healthより一部引用)


結果は?

3-Point MACE

ハザード比 =0.86(95%CI  0.75〜0.97

  P <0.001(非劣性)

  P =0.02(優越性)

 Number Needed to Treat for Benefit(NNTB)=218

 

 

プライマリーアウトカム

 

MACE

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =585

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =426

 

セカンダリーアウトカム

全死亡

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =400

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =281

 

心血管死

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =268

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =185

 

アルブミン尿の進行

ハザード比 =0.73(95%CI  0.67〜0.79

カナグリフロジン群(n=5196), イベント発生数 =1341

プラセボ群(n=3819), イベント発生数 =1114

→eGFRの 40%低下、腎移植、腎不全

ハザード比 =0.60(95%CI  0.47〜0.77

 

心血管死・心不全による入院

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =364

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =288

 

有害事象

全重篤な有害事象

NNTB =64

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:104.3

プラセボ群    :120.0

 

下肢切断

NNTH =333

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:6.3

プラセボ群    :3.3

 

全骨折

NNTH =286

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:15.4

プラセボ群    :11.9

 

生殖器感染(男性)

NNTH =41

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:34.9

プラセボ群    :10.8

 

浸透圧利尿

NNTH =47

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:34.5

プラセボ群    :13.3

 

体液量減少

NNTH =133

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:26.0

プラセボ群    :18.5

 

真菌性生殖器感染(女性)

NNTH =19

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:68.8

プラセボ群    :17.5

 


考察

標準治療へのカナグリフロジン追加は 3-point MACEを優位に低下させた(NNTB =218)。ただしセカンダリであっても下肢切断については留意した方が良いと考えられます(NNTH=333)。

一応、ベネフィットは下肢切断リスクよりも上回ります。しかし同クラス薬はエンパグリフロジンがありますので、カナグリフロジンを選択する必要性は無いと思いました。

またプライマリーアウトカム、セカンダリーアウトカムの一部について、リスク比は増加した。個人的には驚愕の結果です。イベント発生率は両群で同程度なのに、ハザード比においてカナグリフロジン群はプラセボ群に比べ有意に低下。ちなみにですが EMPA-REG OUTCOMEでは、ハザード比(追跡期間を考慮)とリスク比(ある時点の値)は同じぐらいになります。気になる方は是非、算出してみてください。

SGLT-2阻害薬の大規模臨床試験としては、ダパグリフロジンの DECLARE-TIMI58試験(Multicenter Trial to Evaluate the Effect of Dapagliflozin on the Incidence of Cardiovascular Events – Full Text View – ClinicalTrials.gov)が進行中です。Follow-upは 6年を予定しています。何気に楽しみ。


追加情報

アルブミン尿の基準(デザインペーパー参照)

・Normoalbuminuria:尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR*)が 30 mg/g未満

・Microalbuminuria:ACRが 30~300 mg/g

・Macroalbuminuria:ACRが 300 mg/g超

*ACR=Albumin Creatinine Ratio

 

 

 

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メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ)

背景・疑問

今日までメトホルミンによる 2型糖尿病患者の死亡や心血管イベント発生の抑制効果が示唆されている。またアメリカやイギリスでは、年齢や腎機能に関わらず第一選択薬として位置づけられている。

 

 「果たして日本人での効果はどのくらいなのか?」という観点から、まずは日常業務での薬剤活用を意識し代用のアウトカムであるヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c ;HbA1c)低下作用と 肥満指数(Body Mass Index ;BMI)との関係性について明らかにする。以下の資料を基に ”薬を使う前提” で話を進める。

 

メトグルコ®(一般名:メトホルミン塩酸塩)国内承認申請資料  

 試験名:SMP-862の 2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験

 (http://www.clinicaltrials.jp/user/cteDetail.jsp

 結論

日本人 2型糖尿病患者を対象としたメトホルミンの血糖降下作用は、BMIに関係なく一定の効果を示した。さらに本結果は標準治療への Add-onではなく、メトホルミン単独使用によるものである。しかし小規模試験であるためか各値の標準偏差が大きいことは念頭に置いておく必要がある。また元データは未公開であるため批判的吟味が難しい。

BMI(kg/m2   HbA1c(%)

・  〜19.9 —   -1.33% (n= 4)

・20.0〜24.9 —   -1.24% (n= 36)

・25.0〜29.9 —   -1.38% (n= 28)

・30.0〜34.9 — -1.19% (n= 8)

・35.0〜     —     -1.70%(n= 4)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 


試験適格基準

<選択基準>
2型糖尿病で以下の基準を満たす患者
・食事療法・運動療法のみで治療中の患者
・HbA1cが 6.5%以上 12.0%未満で、4週間以上にわたって安定している患者
・20歳以上 75歳未満の男女
・外来患者
 など

<除外基準>
・肝機能障害患者
・腎機能障害患者
・心血管系、肺機能に高度の障害のある患者、その他の低酸素血症を伴いやすい状態の患者
・乳酸アシドーシスの既往を有する患者
・脱水症の患者、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
 など

年齢: 20歳以上 74歳以下
性別: 男女


 

批判的吟味

PICOT

 P:食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な 2型糖尿病患者

 I :メトホルミン塩酸塩 750 mg/日(107例)

    メトホルミン塩酸塩 1500 mg/日(106例)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 C:プラセボ群(55例)

 O:HbA1cなど(おそらくサロゲートマーカーのみ)

 T:プラセボ対照二重盲検、並行群間比較、動的割付、14週間の follow-up、施設は日本国内のみ

 

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

 → されている。動的割付だが詳細な因子は不明。ちなみに今回の場合、HbA1cが対象になっているとマズい。

 

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

 → されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする

 

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

 →不明

 

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

 →代用のアウトカムだが読み進める。アウトカムとして HbA1cは明確だが、その他は不明

 

交絡因子は網羅的に検討されているか?

 →不明

 

Baseline は同等か?どんな患者背景?

 →不明。食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な患者ということだけ既知

 

ITT 解析されているか?

 → 不明だが、HbA1cについてはされていない。

  

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

 →憶測でしかないが、メトホルミン群における HbA1cについては、追跡率 68.4%(31.6%)と、脱落が多い印象。 そもそもの解析方法が不明なため、これ以上の検証は行わない。

 

サンプルサイズは充分か?

 →不明

 

結果は?

 →上記、結論の項を参照


コメント

論文を毛嫌いする友人のために始めてみましたが、このシリーズ需要あるのか心配。とりあえず自分用のメモとして継続しようと思います。

 メトホルミンの血糖降下作用について「他の経口血糖降下薬と比較して弱い」と感じている方もいるようですが、その原因として投与用量が少ないことと、アドヒアランスが低下してしまうことが主であると考えられます。今回の試験の場合、用量 1500 mg/日により BMIに依存せず血糖降下作用が得られています。

 上記の問題については “投薬開始時のコツ” で回避できますので今後、取り上げていきます。

 

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SGLT2阻害薬は 2型糖尿病患者の全死亡リスクを低下できますか?〜Systematic Review & Meta Analysis〜(Acta Diabetol 2017; Charge)

Effects of SGLT-2 inhibitors on mortality and cardiovascular events: a comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials.

Monami M et al.

Acta Diabetol. 2017 Jan;54(1):19-36. doi: 10.1007/s00592-016-0892-7. Epub 2016 Aug 4.

PMID: 27488726

プロトコール文献

以下のサイトを参照:

http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.asp?ID=CRD42015029573.

私的背景

2017年7月23日に開催された EBM-Tokyoに参加し、上記の Systematic Review & Meta Analysis論文を読んだ。その際、RevMan5という Meta-Analysisの実施および作図を行えるソフトを使用し、本論文を吟味している先生に出逢い、触発され、自身でも試したくなった。再度、批判的吟味しつつ結果をまとめたい。

結論

本論文の結果は 2015年 NEJMに掲載された EMPA-REG OUTCOMEの結果に引っ張られているため新規性は無く有用性も低い。SGLT-2阻害薬の有効性については依然として controversial。


PICOT

P: 2型糖尿病

I : Sodium-Glucose coTransporter 2 inhibitor (SGLT-2阻害薬)の使用

C: プラセボあるいは SGLT-2阻害薬以外の薬剤

O: principal    — 全死亡、心血管死

  secondary — 心筋梗塞、脳卒中

T: 予防・治療、ランダム化比較試験のシステマティックレビュー&メタ解析


批判的吟味

使用した文献データベースは何か?

MEDLINE(Pubmed)、Food and Drug Administration(FDA)、European Medicines Agency(EMA)、www.clinicaltrials.gov Web site(clinicaltrials.gov)

検索語は?

SGLT-2 inhibitor(dapagliflozin, empagliflozin, canagliflozin, ipragliflozin, ertugliflozin, luseogliflozin)

研究の種類は?

Randamized Clinical Trial(RCT)

参考文献まで調べたか?

不明(それっぽい記載はあるが明確な記載無し)

個々の研究者に連絡を取ったか?

本文に記載はないが、恐らく取っていない(論文 Fig.1参照)

出版されていない研究も探したか?

探した(FDA、EMA、clinicaltrials.gov)

同じ研究が複数報告されているか?

本文中に記載はないが、論文 Fig.1より排除されていると判断した

英語以外で書かれた論文も探したか?

英語のみ(プロトコール論文参照)

研究は網羅的に集められたか?(出版バイアスは無いか?)

概ね集められていると判断した(本文ファンネルプロットを参照)

集められた研究の評価はどのように行われたか?(各研究の評価は妥当か?)

2人の研究者が独立して行い、意見が分かれたときは3人目が判断した

評価基準は明確か?(Risk of Biasの評価基準は?)

明確(Cochrane Collaboration’s toolを使用)

研究の異質性は検討されたか?

I2 統計量を用い検討されているが表現が古い。P値が 0.1より小さい(つまり異質性が低い)か否かで表現されている。近年では I2=50%のように表現されることが多い

最終的に残った研究数は?

71件、うち統合されたのは 32件(zero event studyを除外)

結果は統合されたか?

統合された。基本的には Rondam-effect modelを使用

Funding sources/sponsors

None

Conflict of interest

Matteo Monami has received speaking fees from Bristol Myers Squibb, Eli-Lilly, Merck, Novonordisk, Merck, and Takeda; and research grants from Bristol Myers Squibb.

Ilaria Dicembrini has no conflicts of interest.

Edoardo Mannucci has received consultancy fees from Merck and Novartis; speaking fees from Astra Zeneca, Bristol Myers Squibb, Merck, and Novartis; and research grants from Merck, Novartis, and Takeda.


結果は?

・全死亡 MH-OR =0.70 [95%信頼区間 0.59〜0.83], p < 0.001

・心血管死 MH-OR =0.43 [0.36〜0.53], p < 0.001

・心筋梗塞 MH-OR =0.77 [0.63〜0.94], p < 0.01

・脳卒中 MH-OR =1.09 [0.86〜1.38], p = 0.50

 

f:id:noir-van13:20170730014444p:plain

Fig.1  全死亡のフォレストプロット(RevMan 5 | Cochrane Community を使用し作成:計 32件の RCTを統合)

 

 

f:id:noir-van13:20170730015243p:plain

Fig.2  統合された 32件の RCTを用いたファンネルプロット(論文中には 71件の RCTの結果が記載されている)

 


コメント

Fig.1をみてみると Weight、つまり統合された結果に対する各研究の重み付けは Zinman (1が 77.1%と一番多い。この研究が EMPA-REG OUTCOMEである。つまり本論文の結果は、1つの大規模な RCTに引っ張られているだけであり、新規性は乏しい。

 

そして EMPA-REG OUTCOMEを取り除いた結果が以下である。

 

f:id:noir-van13:20170730015136p:plain

Fig.3  EMPA-REG OUTCOMEを取り除いた全死亡の統合結果(計 31件)

 

EMPA-REG OUTCOMEを統合してもしなくても異質性は 0%だが、取り除いたことでオッズ比が 1をまたいでしまった(OR =0.79, 95%CI 0.56〜1.11)。

 

1件の RCTの結果のみ(今回の場合は EMPA-REG OUTCOME trial)では薬剤効果を判定するのは難しいと考えられる。つまり現時点では SGLT-2阻害薬使用により全死亡のリスクは、オッズ比で 0.56〜1.11であったということ(SGLT-2阻害薬は使わないようにしましょう!とは言っていません。誰に使うかは非常に悩ましいところ)。そしてオッズ比を使用しているところが肝だと感じる文献です。リスク比やハザード比と異なり、オッズ比はリスクの直接的な判断ができません。オッズ比からリスク比に換算する必要があると考えられます(→準備中です)。

 

また本論文の作成過程が “正確に” 行われたのかについては非常に疑問です。引用先の参考文献の番号が異なっていたり、参考文献には記載のない著者名が本文中に記されていたり、principal outcome以外の異質性が記されていなかったり、集めてきた研究の Risk of Bias評価が誤っていたり等々、てんこ盛りです。本論文の筆頭著者は、糖尿病研究ではかなり有名な人物のようですが、非常に残念でなりません。Fundingは無いようですが COIには注意したい。

 

 

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