2型糖尿病患者における早期の血糖コントロールは合併症をどのくらい防げますか?(Diabetes Care 2018)

The Legacy Effect in Type 2 Diabetes: Impact of Early Glycemic Control on Future Complications (the Diabetes & Aging Study)

Laiteerapong N et al.

PMID: 未

SUPPLEMENTARY DATA:http://care.diabetesjournals.org/content/diacare/suppl/2018/08/12/dc17-1144.DC1/DC171144SupplementaryData.pdf

研究の目的

糖尿病性合併症および死亡に対し早期の血糖コントロールおよび遺産効果(a legacy effect)を検討する。

研究デザインと方法

本コホート研究は、新たに2型糖尿病と診断され、その後10年間生存している患者を対象とした(試験実施期間:1997–2013年、平均フォローアップ期間:13.0年、N= 34,737)。

糖尿病と診断されてからの各期間(0~1、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6および0~7年)において、HbA1c 6.5%未満(<48 mmol/mol)、6.5%〜6.9%(48 to <53 mmol/mol)、7.0%〜7.9%(53 to <64 mmol/mol)、8.0%〜8.9%(64 to <75 mmol/mol)あるいは9.0%以上(≧75 mmol/mol)と、将来の微小血管(末期腎疾患、進行性網膜症、下肢切断)イベントや死亡との関連性について、人口統計やリスク因子、並存疾患、HbA1cについて調整し検討した。

結果

試験開始0~1年の早期曝露において、HbA1c 6.5%未満(<48 mmol/mol)と比較し、HbA1c 6.5%以上(≧48 mmol/mol)では微小血管および大血管イベントの増加と関連していた。例えば、HbA1c 6.5~6.9%(48 to <53 mmol/mol)における微小血管イベントは、ハザード比(hazard ratio, HR)=1.204(95%CI 1.063~1.365)。

またHbA1c 7.0%以上(≧53 mmol/mol)では死亡増加と関連していた。例えばHbA1c 7.0〜7.9%(53 to <64 mmol/mol)における死亡イベントは、HR =1.290 (95%CI 1.104~1.507)。

HbA1c 8.0%以上(≧64 mmol/mol)に長期間暴露された場合、微小血管イベントおよび死亡リスクが増加していた。

結論

新たに糖尿病と診断され10年生存した患者のうち、診断後1年目のHbA1c値が6.5%以上(≧48 mmol/mol)の患者では、よりアウトカムの悪化と関連していた。

新規に糖尿病と診断された患者のために、即座に、集中的に治療することは、糖尿病性血管合併症および死亡に対し長期的なリスクを避けるために必要であるかもしれない。


コメント

あくまで観察研究ですが、非常に興味深い結果です。ただし新規性は乏しいと考えられます。早期かつ初期の2型糖尿病患者に対し厳格な血糖コントロールが種々のイベントを低下させることは以前から報告されています。

ここは個々のアウトカム次第だと思いますが、(薬剤性)低血糖なしに厳格な血糖コントロールが行えるならば、これに越したことはありません。しかし、本研究における各イベントに対する厳格な血糖コントロールの効果推定値をみると「イマイチ効果が得られなそう」という印象。7~7.9%なら微小血管イベントはあまり増えず、死亡が少し増加といったところ。

個人的には、ほどほどな血糖コントロールで良い気がする。

 

 

 

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DPP4阻害薬は糖尿病性網膜症のリスクとなりますか?(Diabetes Metab. 2018)#100

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitor use and risk of diabetic retinopathy: A population-based study.

Kim NH et al.

Diabetes Metab. 2018 Mar 27. pii: S1262-3636(18)30073-9. doi: 10.1016/j.diabet.2018.03.004. [Epub ahead of print]

PMID: 29752167

試験の目的

ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(dipeptidyl peptidase-4 inhibitor: DPP4i)の使用が、2型糖尿病患者における他の血糖降下藥と比較して、糖尿病性網膜症に有益であるか有害であるかを検討した。

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DPP-4阻害薬の使用は炎症性腸疾患を誘発しますか?①(BMJ 2018)

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and incidence of inflammatory bowel disease among patients with type 2 diabetes: population based cohort study.

Abrahami D et al.

BMJ. 2018 Mar 21;360:k872. doi: 10.1136/bmj.k872.

PMID: 29563098

背景

マウス炎症性腸疾患モデルに関する研究では、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬により疾患活性の低下をもたらすことが示唆されている。一方、臨床データでは炎症性腸疾患患者の血清 DPP-4濃度が低値であることも報告されている。

DPP-4阻害薬と炎症性腸疾患発症との因果関係は依然として不明である。そこで DPP-4阻害薬使用と炎症性腸疾患との関連についてコホート研究を実施した。

“DPP-4阻害薬の使用は炎症性腸疾患を誘発しますか?①(BMJ 2018)” の続きを読む

2型糖尿病患者の降圧療法においてアンギオテンシン-アルドステロン ブロッカーへの追加薬は何が良いですか?(CJASN 2018)

Add-On Antihypertensive Medications to Angiotensin-Aldosterone System Blockers in Diabetes. A Comparative Effectiveness Study

Schroeder EB et al.

The Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2018

PMID: 未

背景と目的

糖尿病患者の重大な腎臓イベントのリスクについて、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE-I)またはアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)への(他クラスの)降圧薬追加による有効性の比較は依然として不明である。

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エンパグリフロジンは2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制できますか?実はオープンラベルですか?(EMPA-REG OUTCOME: NEJM.2015 Free)

Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.

Zinman B et al.; EMPA-REG OUTCOME Investigators.

N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.

PMID: 26378978

ClinicalTrials.gov No.: NCT01131676

【資金提供】

ベーリンガー・インゲルハイムBoehringer Ingelheim

イーライ・リリーEli Lilly

 

【利益相反COI or 開示disclosure】

めっちゃある(本文参照)。個人的には “The trial was designed and overseen by a steering committee that included academic investigators and employees of Boehringer Ingelheim.” という部分がかなり気になる。

私的背景

EBM勉強会に参加し本論文を読んだ。その中で気になった点がいくつかあったので再度、批判的吟味しつつ考えをまとめてみる。

“エンパグリフロジンは2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制できますか?実はオープンラベルですか?(EMPA-REG OUTCOME: NEJM.2015 Free)” の続きを読む

日本人2型糖尿病患者における低用量アスピリンの使用はアテローム性動脈硬化症の初発を予防できますか?(JAMA 2008: JPAD trial; Free)

Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial.

PMID: 18997198

ClinicalTrials.gov No: NCT00110448

改訂あり:テーブル内の数値に誤りがあり、2017年2月までに本文修正が 2回あったようです。

背景

糖尿病は心血管イベントの強力な危険因子である。Framingham Heart Study において、糖尿病は男女それぞれ 1.5と 1.8の冠動脈疾患のオッズ比と関連し、男性と女性の脳卒中の相対リスクはそれぞれ 1.4と 1.7であると報告されている。 糖尿病患者は、健常人よりも心血管イベントを発症するリスクが 2〜4倍高いことも報告されている。
   過去の報告では、心血管イベントの二次予防戦略としてアスピリン療法が確立されており、研究成果がいくつか報告されている。また臨床ガイドラインでは、冠状動脈疾患の危険因子を有するヒトは、一次予防および二次予防のためにアスピリンを投与することが推奨されている。

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2型糖尿病治療における血圧や脂質、血糖コントロールはどのように行いますか?ほどほどでも何とかなりますか?(後向きコホート研究; PLoS One. 2014; Free)

All-Cause Mortality in Patients with Type 2 Diabetes in Association with Achieved Hemoglobin A1c, Systolic Blood Pressure, and Low-Density Lipoprotein Cholesterol Levels

PLoS One. 2014 Oct 27;9(10):e109501. doi: 10.1371/journal.pone.0109501. eCollection 2014.

Chiang HH et al.

PMID: 25347712

 

背景

2型糖尿病患者におけるヘモグロビンA1c(HbA1c)および収縮期血圧(SBP)、低比重リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のコントロールについてはあまり明らかではない。本研究では、各々のコントロール幅と死亡率との関連性を明らかにする。

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メトホルミン使用はDPP-4阻害薬が心血管アウトカムに及ぼす影響を緩和できるかもしれない(メタ分析; Diabetes Care 2017: Charge)

Metformin Use May Moderate the Effect of DPP-4 Inhibitors on Cardiovascular Outcomes.

Crowley MJ et al.

Diabetes Care. 2017.

PMID: 29051159

【目的】

メトホルミン使用がジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤(DPP-4i)の心血管作用に対する潜在的モデレーターであるか探索する。

【方法および研究デザイン】

DPP-4i使用による 3-point MACEへの影響を検討した臨床試験についてメタ分析を行った。 DPP-4iの心血管作用が、メトホルミン使用者と非使用者とで異なるかを検討するためにメタ回帰(分析)を用いた。

【結果】

DPP-4iとメトホルミンを使用しているグループでは、心血管アウトカムのハザード比[HR] は 0.92、95%信頼区間[95%CI]は 0.84~1.01であった。一方、メトホルミン非使用グループでは、HR =1.10 [95%CI 0.97~1.26]であった。

メトホルミン使用者と非使用者のサブグループ解析において、DPP-4i使用による効果の差は、統計的に有意であった(P = 0.036)。

【結論】

PP-4i使用による心血管アウトカム増加に対し、基礎治療としてのメトホルミン使用は緩和効果を有する可能性がある。

仮説生成分析は、DPP-4i使用が心血管アウトカムに及ぼす影響について、依然として不確実性が存在していること(併用薬に依存すること)を示唆している。

【コメント】

アブストのみ。

著者も述べていますが、本結果は ”仮説生成” です。過去の RCTやメタ解析において DPP-4i使用による心不全増加の懸念が報告されていますが、心不全を増やさないとする報告もあります。

個人的には薬剤間で安全性に差異があると捉えています。また過去の臨床試験結果をみてみると、基礎治療にはほぼメトホルミンが使用されています。個人的には DPP-4i単独で使用する意義は分かりません。続報を待ちます。

 

 

 

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カナグリフロジンは 2型糖尿病患者の心血管・腎イベント発生を抑制できますか?(CANVAS program; NEJM 2017; Free→charge)

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.

N Eng J Med. 2017 Jun 12. doi: 10.1056/NEJMoa1611925. [Epub ahead of print]

Neal B et al.

PMID: 28605608

ClinicalTrials.gov No.: NCT01032629(CANVAS), NCT01989754(CANVAS-R)

 

【資金提供】

Janssen Research and Development

 

【利益相反COI or 開示disclosure】

http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1611925/suppl_file/nejmoa1611925_disclosures.pdf

【統合解析方法のペーパー】

Optimizing the analysis strategy for the CANVAS Program: A prespecified plan for the integrated analyses of the CANVAS and CANVAS-R trials. – PubMed – NCBI

PMID: 28244644

試験背景

カナグリフロジン(商品名:カナグル)は、糖尿病患者の血糖値、体重、およびアルブミン尿を減少させるナトリウム – グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害剤である。
心血管、腎臓、および安全性アウトカムに対するカナグリフロジン治療の効果を報告する。本論文は、CANVASおよび CANVAS-Rという 2試験の統合結果である。 “カナグリフロジンは 2型糖尿病患者の心血管・腎イベント発生を抑制できますか?(CANVAS program; NEJM 2017; Free→charge)” の続きを読む

メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ)

背景・疑問

今日までメトホルミンによる 2型糖尿病患者の死亡や心血管イベント発生の抑制効果が示唆されている。またアメリカやイギリスでは、年齢や腎機能に関わらず第一選択薬として位置づけられている。

 

 「果たして日本人での効果はどのくらいなのか?」という観点から、まずは日常業務での薬剤活用を意識し代用のアウトカムであるヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c ;HbA1c)低下作用と 肥満指数(Body Mass Index ;BMI)との関係性について明らかにする。以下の資料を基に ”薬を使う前提” で話を進める。

 

メトグルコ®(一般名:メトホルミン塩酸塩)国内承認申請資料  

 試験名:SMP-862の 2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験

 (http://www.clinicaltrials.jp/user/cteDetail.jsp

 結論

日本人 2型糖尿病患者を対象としたメトホルミンの血糖降下作用は、BMIに関係なく一定の効果を示した。さらに本結果は標準治療への Add-onではなく、メトホルミン単独使用によるものである。しかし小規模試験であるためか各値の標準偏差が大きいことは念頭に置いておく必要がある。また元データは未公開であるため批判的吟味が難しい。

BMI(kg/m2   HbA1c(%)

・  〜19.9 —   -1.33% (n= 4)

・20.0〜24.9 —   -1.24% (n= 36)

・25.0〜29.9 —   -1.38% (n= 28)

・30.0〜34.9 — -1.19% (n= 8)

・35.0〜     —     -1.70%(n= 4)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 


試験適格基準

<選択基準>
2型糖尿病で以下の基準を満たす患者
・食事療法・運動療法のみで治療中の患者
・HbA1cが 6.5%以上 12.0%未満で、4週間以上にわたって安定している患者
・20歳以上 75歳未満の男女
・外来患者
 など

<除外基準>
・肝機能障害患者
・腎機能障害患者
・心血管系、肺機能に高度の障害のある患者、その他の低酸素血症を伴いやすい状態の患者
・乳酸アシドーシスの既往を有する患者
・脱水症の患者、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
 など

年齢: 20歳以上 74歳以下
性別: 男女


 

批判的吟味

PICOT

 P:食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な 2型糖尿病患者

 I :メトホルミン塩酸塩 750 mg/日(107例)

    メトホルミン塩酸塩 1500 mg/日(106例)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 C:プラセボ群(55例)

 O:HbA1cなど(おそらくサロゲートマーカーのみ)

 T:プラセボ対照二重盲検、並行群間比較、動的割付、14週間の follow-up、施設は日本国内のみ

 

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

 → されている。動的割付だが詳細な因子は不明。ちなみに今回の場合、HbA1cが対象になっているとマズい。

 

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

 → されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする

 

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

 →不明

 

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

 →代用のアウトカムだが読み進める。アウトカムとして HbA1cは明確だが、その他は不明

 

交絡因子は網羅的に検討されているか?

 →不明

 

Baseline は同等か?どんな患者背景?

 →不明。食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な患者ということだけ既知

 

ITT 解析されているか?

 → 不明だが、HbA1cについてはされていない。

  

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

 →憶測でしかないが、メトホルミン群における HbA1cについては、追跡率 68.4%(31.6%)と、脱落が多い印象。 そもそもの解析方法が不明なため、これ以上の検証は行わない。

 

サンプルサイズは充分か?

 →不明

 

結果は?

 →上記、結論の項を参照


コメント

論文を毛嫌いする友人のために始めてみましたが、このシリーズ需要あるのか心配。とりあえず自分用のメモとして継続しようと思います。

 メトホルミンの血糖降下作用について「他の経口血糖降下薬と比較して弱い」と感じている方もいるようですが、その原因として投与用量が少ないことと、アドヒアランスが低下してしまうことが主であると考えられます。今回の試験の場合、用量 1500 mg/日により BMIに依存せず血糖降下作用が得られています。

 上記の問題については “投薬開始時のコツ” で回避できますので今後、取り上げていきます。

 

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