ピロリ菌除菌で胃がんを防げますか?(CDSR2015:ピロリ菌除菌のベネフィット)

Helicobacter pylori eradication for the prevention of gastric neoplasia.

Ford AC et al.

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 22;(7):CD005583.

PMID: 26198377

背景

前回の記事でピロリ菌除菌によるリスクとベネフィットについて検討することとした。胃がんは、がん死亡の第3位である。

ピロリ菌除菌によるリスクとベネフィットはどのくらいか?(①導入編)

まずはベネフィットについてエビデンスを紹介する。

結論

ピロリ菌除菌による効果は限定的。胃がん発生率は減るが、胃がんによる死亡および全死亡は減らせなかった。

また食道扁平上皮がんの発生リスクは、有意差は無いものの増加傾向。

さらに前がん病変の有無に関わらず、ピロリ菌除菌による胃がん発生率の低下は認められなかった。


PICOT

P: 16歳以上の健康な無症候性ピロリ菌感染者

I : ピロリ菌の除菌

C: プラセボあるいは無治療

O: 胃がん発生率

T: 予後、最大6試験の統合、システマティックレビュー&メタ解析


批判的吟味

使用した文献データベースは何か?

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL; 2013, Issue 11)、MEDLINE(1946 to DEC 2013)、EMBASE(1974 to DEC 2013)

検索語は?

不明

研究の種類は?

Randomized Controlled Trials(RCTs)

参考文献まで調べたか?

調べた。ハンドサーチ

個々の研究者に連絡を取ったか?

取った

出版されていない研究も探したか?

探した

同じ研究が複数報告されているか?

重複無し

英語以外で書かれた論文も探したか?

言語制限無し

研究は網羅的に集められたか?(出版バイアスは無いか?)

概ね集められているが、基準を満たせたのは1560試験中6試験。

集められた研究の評価はどのように行われたか?(各研究の評価は妥当か?)

2人の研究者が独立して行い、意見が分かれたときは3人目が判断した

評価基準は明確か?(Risk of Biasの評価基準は?)

明確(Cochrane Collaboration’s toolを使用)

研究の異質性は検討されたか?

I2 統計量を用い検討されている

最終的に残った研究数は?

6件

結果は統合されたか?

統合された。基本的には Rondam-effect modelを使用

Funding sources/sponsors

None

Conflict of interest

PM is the joint co-ordinating of the Cochrane Upper Gastrointestinal and Pancreatic Disease Group, however editorial decisions about this review were made by the other joint co-ordinating editor and independent peer reviewers.

 


結果は?

(表1. メタ分析の結果 — 論文より筆者作成)

 

・胃がん発生率 

 リスク比(Relative Ratio: RR)=0.66 [95%信頼区間 0.46〜0.95], +++, moderate

・胃がんによる死亡

 RR=0.67 [95%信頼区間 0.40〜1.11], +++, moderate

・全死亡

 RR=1.09 [95%信頼区間 0.86〜1.38], +++, moderate

・食道扁平上皮がん

 RR=1.99 [95%信頼区間 0.18〜21.91], +++, moderate

・有害事象

 0, 報告が少ないため評価できず。


コメント

バイアスリスク、フォレストプロットの検討はされていたが、統合された試験数が少ないためファンネルプロットは作成されていない。

ピロリ菌除菌による効果は限定的。胃がんは減るが、胃がんによる死亡や全死亡の結果は効果無し。そして食道扁平上皮がんの発生リスクは、有意差は無いものの増加傾向。

統合された試験数が少ないのは確かだが、胃がん発生率の効果推定値の幅は狭い。

感度分析の結果、前がん病変のない患者ではピロリ菌除菌による胃がん発生率 RR=0.42(95%CI 0.02〜7.69)。前がん病変のある患者では RR=0.86(95%CI 0.47〜1.59)。

積極的に除菌しましょうとは言えない結果であった。

 

 

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カナグリフロジンは 2型糖尿病患者の心血管・腎イベント発生を抑制できますか?(CANVAS program; NEJM 2017; Free→charge)

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.

N Eng J Med. 2017 Jun 12. doi: 10.1056/NEJMoa1611925. [Epub ahead of print]

Neal B et al.

PMID: 28605608

ClinicalTrials.gov No.: NCT01032629(CANVAS), NCT01989754(CANVAS-R)

 

【資金提供】

Janssen Research and Development

 

【利益相反COI or 開示disclosure】

http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1611925/suppl_file/nejmoa1611925_disclosures.pdf

【統合解析方法のペーパー】

Optimizing the analysis strategy for the CANVAS Program: A prespecified plan for the integrated analyses of the CANVAS and CANVAS-R trials. – PubMed – NCBI

PMID: 28244644

試験背景

カナグリフロジン(商品名:カナグル)は、糖尿病患者の血糖値、体重、およびアルブミン尿を減少させるナトリウム – グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害剤である。
心血管、腎臓、および安全性アウトカムに対するカナグリフロジン治療の効果を報告する。本論文は、CANVASおよび CANVAS-Rという 2試験の統合結果である。

結論

カナグリフロジンはハイリスク 2型糖尿病患者の心血管および腎イベントを抑制した。ただし日本での承認用量と異なる点、セカンダリアウトカムであっても下肢切断のリスク増加については慎重に検討する必要がある。従って同クラスの他の薬剤より優れているとは言いがたい。


組入基準

HbA1c 7.0~10.5%の 2型糖尿病の男女、30歳以上で症候性アテローム性心血管疾患を有しているか 50歳以上で心血管疾患リスク(糖尿病罹患10年以上、収縮期血圧 140 mmHg以上で降圧薬を 1つ以上使用、喫煙、微小アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿、あるいは HDLコレステロール 1 mmol/L=38.7 mg/dL未満)を 2つ以上有す患者、eGFRが 30 mL/min/1.73 m2以上 etc.

除外基準

糖尿病性ケトアシドーシスの既往、1型糖尿病あるいは膵細胞移植、膵炎あるいは膵臓切除による糖尿病、スクリーニング前に治療薬および用量が少なくとも 8週間安定していない患者、ベースライン/Day1時の空腹時血糖 270 mg/dL(15 mmol/L)超あるいはスルホニルウレア剤またはインスリン使用中の患者の場合は空腹時血糖 110 mg/dl(<6mmol/L)未満、スクリーニング前 6ヶ月間に 1回以上の重症低血糖の既往 etc.


批判的吟味

RobotReviewerによる Risk of Bias Table

f:id:noir-van13:20170825192907p:plain

PICOTS

P: 心血管ハイリスク 2型糖尿病患者(罹患期間は平均 13.5 ± SD7.8年

I :標準治療へのカナグリフロジン(商品名:カナグル)追加

CANVAS trial

→ カナグリフロジン 300 mg/day、100 mg/day、placeboの 3群

CANVAS-R trial

→ カナグリフロジン 100 mg/day(12週以降 300 mgまで増量可)の 2群

 ※300mgまで増加した患者は71.4%

 ※日本での承認用量は 100 mg/dayまで(2017年9月時点)

C: 標準治療への Placebo追加

O: Primary — 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合

Secondary — ①全死亡、②心血管死、③アルブミン尿の進行(30%以上のアルブミン尿の増加および、正常アルブミン尿からの微小アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿への増悪、微小アルブミン尿からの顕性アルブミン尿への増悪)、④心血管死および心不全による入院の複合

T: 予防・治療、ランダム化比較試験、追跡期間 =188.2週(3.9年)

S: アジア-太平洋、北アメリカ、ラテン系アメリカ、ヨーロッパ諸国、その他

    30ヵ国、667施設(少なくとも約20%がアメリカから参加と推定)

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

→ されている。Interactive Web Response System(IWRS)を採用

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?

→ されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする(本文 Figure 1A参照)。2週間の run-in期間は single-blind(患者のみ)

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

→Concealmentの記載はないが、IWRSを採用していることから隠蔽化されていると判断(中央割付)。トライアルスポンサーであるヤンセンが実施しているところが少し気になる(気にしすぎ?)

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

→ 真であるが複合であるため結果の解釈に注意が必要

交絡因子は網羅的に検討されているか?

→ 概ねされている

Baseline は同等か?どんな患者背景?

→ 同等と判断。心血管疾患既往が 65.6%とハイリスクな集団であると考えられる。利尿薬の使用患者が 44.3%という点が個人的には気になる。内訳も知りたい。

ITT 解析されているか?

→ されている。

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

→ ITT解析であるため追跡率100%

試験完遂率はカナグリフロジン群 96.1% vs. placebo群 95.7%と同等

脱落は全体で4.19%(184+224 / 4163+5571)と問題なさそう。

サンプルサイズは充分か?

→ 心血管セーフティ検討のために 688例のイベント発生が必要(β =90%パワー、αレベル =0.05)。しかしプライマリーアウトカムのイベント発生数は、CANVASでは 658(425+233)と足りず、CANVAS-Rを合わせた CANVAS program全体としては 1,011と充分。

→当初の計画では、CANVAS試験のみで 18,000例を予定していたが、第一段階の組入れ後に試験スポンサーが第二段階の被験者募集を中止することを決定した。そこで代替案として、アウトカムを腎臓病等に変更し、イベント発生抑制効果を検討する CANVAS-R試験を新たに計画した。

f:id:noir-van13:20170903134220p:plain

f:id:noir-van13:20170903134225p:plain

(Study Design Figures. Major study heralds new era in treatment of type 2 diabetes: CANVAS results available | The George Institute for Global Healthより一部引用)


結果は?

3-Point MACE

ハザード比 =0.86(95%CI  0.75〜0.97

  P <0.001(非劣性)

  P =0.02(優越性)

 Number Needed to Treat for Benefit(NNTB)=218

 

 

プライマリーアウトカム

 

MACE

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =585

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =426

 

セカンダリーアウトカム

全死亡

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =400

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =281

 

心血管死

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =268

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =185

 

アルブミン尿の進行

ハザード比 =0.73(95%CI  0.67〜0.79

カナグリフロジン群(n=5196), イベント発生数 =1341

プラセボ群(n=3819), イベント発生数 =1114

→eGFRの 40%低下、腎移植、腎不全

ハザード比 =0.60(95%CI  0.47〜0.77

 

心血管死・心不全による入院

カナグリフロジン群(n=5795), イベント発生数 =364

プラセボ群(n=4347), イベント発生数 =288

 

有害事象

全重篤な有害事象

NNTB =64

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:104.3

プラセボ群    :120.0

 

下肢切断

NNTH =333

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:6.3

プラセボ群    :3.3

 

全骨折

NNTH =286

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:15.4

プラセボ群    :11.9

 

生殖器感染(男性)

NNTH =41

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:34.9

プラセボ群    :10.8

 

浸透圧利尿

NNTH =47

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:34.5

プラセボ群    :13.3

 

体液量減少

NNTH =133

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:26.0

プラセボ群    :18.5

 

真菌性生殖器感染(女性)

NNTH =19

          イベント数(/1000人年)

カナグリフロジン群:68.8

プラセボ群    :17.5

 


考察

標準治療へのカナグリフロジン追加は 3-point MACEを優位に低下させた(NNTB =218)。ただしセカンダリであっても下肢切断については留意した方が良いと考えられます(NNTH=333)。

一応、ベネフィットは下肢切断リスクよりも上回ります。しかし同クラス薬はエンパグリフロジンがありますので、カナグリフロジンを選択する必要性は無いと思いました。

またプライマリーアウトカム、セカンダリーアウトカムの一部について、リスク比は増加した。個人的には驚愕の結果です。イベント発生率は両群で同程度なのに、ハザード比においてカナグリフロジン群はプラセボ群に比べ有意に低下。ちなみにですが EMPA-REG OUTCOMEでは、ハザード比(追跡期間を考慮)とリスク比(ある時点の値)は同じぐらいになります。気になる方は是非、算出してみてください。

SGLT-2阻害薬の大規模臨床試験としては、ダパグリフロジンの DECLARE-TIMI58試験(Multicenter Trial to Evaluate the Effect of Dapagliflozin on the Incidence of Cardiovascular Events – Full Text View – ClinicalTrials.gov)が進行中です。Follow-upは 6年を予定しています。何気に楽しみ。


追加情報

アルブミン尿の基準(デザインペーパー参照)

・Normoalbuminuria:尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR*)が 30 mg/g未満

・Microalbuminuria:ACRが 30~300 mg/g

・Macroalbuminuria:ACRが 300 mg/g超

*ACR=Albumin Creatinine Ratio

 

 

 

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非小細胞肺がんに対するニボルマブとドセタキセルの効果はどのくらいですか?(CheckMate 057)

Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer.

Borghaei H et al.

N Engl J Med. 2015 Oct 22;373(17):1627-39

PMID: 26412456

Funding: Bristol-Myers Squibb

ClinicalTrials.gov number: NCT01673867

(プロトコールの途中変更あり→  Appendix より計 3 回変更、優越性が認められたため早期中止)

背景

非扁平上皮性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者における効果的な選択肢は、初回化学療法後に病態が進行する患者に限定されている。

(参照→ EBMの手法による肺癌診療ガイドライン2015年版:ガイドライン上の一次治療はプラチナ製剤やチロシンキナーゼ阻害薬が推奨されている。個々のエビデンスの吟味はできていない、というか時間かかりそうなので今回は勘弁)

(セカンドラインにおける)ドセタキセル推奨は、最善のサポートケアではなく生存期間の延長に基づいて進行性 NSCLC の治療の第 2 選択として承認された。

ドセタキセル(商品名:タキソール微小管重合阻害薬)よりも良好な副作用プロファイルを有するペメトレキセド(商品名:アリムタジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬)およびエルロチニブ(商品名:タルセバ上皮成長因子受容体 EGFR 阻害薬)のような比較的新しい薬剤はドセタキセルよりも劣っている、あるいはセカンドラインとして使用された場合に全生存期間においてドセタキセルに対し優位性を示せなかった(非劣性)。

活性化T細胞上に発現する Programmed Death 1PD-1)受容体は、腫瘍に発現したリガンド PD-L1 および PD-L2 が結合することにより、T細胞活性化がダウンレギュレーションされ、腫瘍は免疫逃避immune escape を促進する(つまり腫瘍細胞は免疫系による認識および排除を免れる)。
完全ヒト IgG4 PD-1 免疫チェックポイント阻害抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、PD-1 媒介シグナル伝達を破壊し、T 細胞の抗腫瘍免疫を回復させる可能性がある(低下した抗腫瘍作用を回復させる)。
1相試験では、ニボルマブ単剤療法は耐久性のある抗腫瘍活性を示し、NSCLC サブタイプ全てにおいて生存率を向上させた(①Phase I study of single-agent anti-programmed death-1 (MDX-1106) in refractory solid tumors: safety, clinical activity, pharmacodynamics, and immun… – PubMed – NCBI、②Safety, activity, and immune correlates of anti-PD-1 antibody in cancer. – PubMed – NCBI、③Overall Survival and Long-Term Safety of Nivolumab (Anti-Programmed Death 1 Antibody, BMS-936558, ONO-4538) in Patients With Previously Treated Adv… – PubMed – NCBI)。

重度前治療を受けている進行性非扁平上皮性 NSCLC 患者のうち、nivolumab17.6の反応率と関連しており、(投与後)1年で 42%、2年で 23%、3年で 16の全生存率、および(投与後)1年で無増悪生存率 18%を示した(上記文献結果)。
今回、進行性非扁平上皮性 NSCLC 患者において、ニボルマブとドセタキセルを比較した無作為化オープンラベル国際共同第相試験の結果を報告する。

結論

ドセタキセルに比べ、ニボルマブは進行性非扁平上皮性 NSCLC 患者の全生存率が優れていた。絶対リスク減少率は12%NNT9であった。


組み入れ基準

→ECOG 0 あるいは 1 の患者。

十分な血液学的、肝臓および腎機能を有する。

中枢神経系への転移を有する患者は、転移が治療され安定していれば組み入れた。

治療開始前に得られた腫瘍組織は、バイオマーカー分析に使用するのみで患者の選択には使用されなかった。

NSCLC IIIB期または IV、放射線照射後の再発性非扁平上皮癌治療、外科的切除後の再発、進行期間中、以前にプラチナベースの 2 剤併用化学療法レジメンを 1 度だけ受けた患者。

EGFR 変異または ALK 転座が既知の患者は、チロシンキナーゼ阻害剤療法の追加あるいは追加治療の選択、およびペメトレキセド、ベバシズマブ、またはエルロチニブへの治療切り替えは全ての患者に認められた。

除外基準

自己免疫疾患、症候性間質性肺疾患、全身性免疫抑制、チェックポイント標的薬剤を含む免疫刺激性抗腫瘍剤による前治療、およびドセタキセルの事前使用。


PECOT

P非扁平上皮性 NSCLC 平均 62 歳(range: 21-85)の男女 582

I:ニボルマブ 3 mg/kg2 週間毎に投与(最大投与可能回数:約 26 /年), i.v.

C:ドセタキセル 75 mg/m23 週間毎に投与(最大投与可能回数: 17 /年), i.v.

Oprimary – 全生存期間

secondary – 治験担当者が評価した奏効率、無増悪生存率、腫瘍 PD-L1 発現レベルによる有効性、および患者が報告したアウトカム

T:ランダム化比較試験(オープンラベル)


批判的吟味

ランダム割付が隠蔽化されているか?(selection bias は無いか?)

以前に受けていた治療の影響が本試験結果に反映される可能性が高いため、以下 2 因子についての層別化を実施(この2因子については両群で同条件になるよう努めている)。Concealment については IVRSを採用しているため中央割付の可能性が高い。

以前の維持療法(Yes vs. No)および②治療ライン(2ndライン vs. 3rdライン)

Randomization was stratified according to prior maintenance treatment (yes vs. no) and line of therapy (second line vs. third line).

マスキングされているか?(ブラインドか否か?)

オープンラベル open-label

疾患からブラインドで行うことは困難であり、費用面からも不適と考えられる。また薬剤によって投与期間が異なる。リアルワールドで肺がん患者がどんな治療を受けるか知らないことはほぼ無いだろう。

治療薬による副作用の早期発見および早期治療、個々の薬剤毎に副作用が異なるためにオープンで実施したとの記載あり。

プライマリーアウトカムは真か?

真(全生存期間)

Baseline は同等か?

同等(インバランスについても記載有り)

→The baseline characteristics were balanced between the treatment groups, with slight between-group imbalances in the percentages of male patients (二ボルマブ 52% vs. ドセタキセル 58%) and patients younger than 65 years of age. (←ここは 75歳未満の間違いかな?と思いましたが、 appendix 65歳未満の組み入れ数の記載もありました。二ボルマブ:37-84歳、65歳以上-75歳未満 88人、65歳未満 184 vs. ドセタキセル:21-85歳、同 112人、同 155)

交絡因子は網羅的に記載されているか?

記載されている(他にもあるかも

大項目で 14 因子:年齢(中央値・範囲)、75歳以上の割合、性別(男性の割合)、人種(白人、アジア人、黒人、その他)、ECOG performance‑status score、肺がんステージ(ⅢB、Ⅳ)、喫煙歴Current or former smokerNever smokedUnknown)、EGFR 変異有り、ALK 変異有り、KRAS 変異有り、以前の維持療法、治療ライン、前治療レジメン(白金ベース、ALK 阻害薬、EGFR チロシンキナーゼ阻害薬)、最良効果判定(完全あるいは部分奏効、安定、進行、不明あるいは報告無し)

ITT 解析されているか?

されている。本文に記載有り。part of intention-to-treat

追跡率(脱落)はどのくらいか?脱落率は結果を覆す程か?

Table 3 以外はニボルマブ 292 vs. ドセタキセル 290 例で解析。なので Figure 1 の結果については、脱落無しの追跡率100% で問題ないと考えられます。

また以下の項目も追記いたします。

追跡率は両群ともに 90% を超えているため問題ないと判断した。

二ボルマブ:追跡率 287/292 = 98.29%(脱落 5 例、1.71%

(脱落の内訳:試験薬とは無関係な有害事象 1 例、組入基準から逸脱 4 例)

ドセタキセル:追跡率 268/290 =  92.41%(脱落 22 例、7.59%

(脱落の内訳:患者希望により治療中止 4 例、同意撤回 12 例、追跡不能 1 例、組入基準から逸脱 5 例)

サンプルサイズは充分か?

403 例の死亡時点で解析し優越性があれば中止。抗がん剤の場合、途中解析・優越性示唆による早期中止を想定しているため、推定必要例数に到達した時点で統計解析する(解析回数も予め設定している)。近年では The O’Brien–Fleming alpha-spending functionを用いることが多いようである。途中解析を実施し最終解析にて P= 0.0408 未満で優越性が示されている(403 例死亡後に P= 0.047 未満であれば優越性有り)。

ドセタキセルの過去の試験結果から、262 例の死亡時点における有意差は両側 5%power= 90、ハザード比= 0.72 と推定している。また 403 例の死亡が認められるであろう推定必要期間は約 25 ヶ月とのこと。本試験では中央値 12.2 ヶ月時点において設定死亡数に達したものと考えられる。two-sided  5%  significance  level  sequential  test  procedure  with  one interim  analysis  after  262  deaths  (65%  of  total  deaths)  will  have  90%  power  if the  median  OS  times  in docetaxel and BMS-936558 are 8 and 11.1 months (HR=0.72).


結果は?

Primary outcome である薬剤投与 1 年後の全生存期間については統計学的有意差有り。

◯追跡期間中央値:

12.2 ヶ月(95% confidence interval [CI] 9.7-15.0

◯全生存率:

二ボルマブ51% (95% CI 45-56) vs. ドセタキセル39% ( 33-45)

◯ハザード比(Hazard ratio, HR):

0.7395% CI 0.59-0.89; P = 0.002本文では96%になってる。間違い?

Secandary outcome

◯治験担当者が評価した奏効率

二ボルマブ19%95% CI, 15-24vs. ドセタキセル12%95% CI, 9-17 P = 0.02

(完全奏効:ニボルマブ 4 vs. ドセタキセル 1 人)

◯無増悪生存率・期間(投与 1 年後):

二ボルマブ19%95% CI, 14-23vs. ドセタキセル8%95% CI, 5-12P = 0.02

二ボルマブ 2.3 months95% CI, 2.2-3.3vs. ドセタキセル4.295% CI, 3.5-4.9

HR = 0.9295% CI, 0.77-1.1; P= 0.39

◯腫瘍 PD-L1 発現レベルによる有効性(582 例中 455 例、78% がデータ有り):

PD-L1 の発現度合いにより治療効果が異なっている。サプリのデータだが、個人的には重要であると捉え掲載した。これを踏まえていれば CheckMate-026 fail は無かったのではなかろうか。

◯患者が報告したアウトカム:

現在進行中との記載有り。Safety  was  assessed  by  an  evaluation  of  the  incidence  of clinical adverse events and laboratory variables, which  were  graded  according  to  the  National Cancer  Institute  Common  Terminology  Criteria for  Adverse  Events,  version  4.0.  Select  adverse events (those with a potential immunologic cause) were grouped according to prespecified categories. Analyses  of  patient-reported  outcomes  are  ongoing.


考察

Figure 1 の結果から、二ボルマブは投与開始 9 ヶ月後よりドセタキセルとの差が開き始めており、12 ヶ月後には有意な差を持って 27% 死亡リスクを低下させた。しかし、癌の進行割合においてはドセタキセルの方が少なかった。

Primary outcome についてもう少し詳しく見ていくと、

◯相対リスク RR51/39 = 1.308(生存率なので 1 より大きい方が良い)

◯相対リスク減少率 RRR:(39-51/39 = 0.30830.8%

◯絶対リスク減少率 ARR51-39 = 12%

◯治療必要数 NNT1/0.12 = 8.333 = 8 9 人(ここは切り上げでした。御指摘ありがとうございます)

◯治療期待オッズ(N 先生の受売り):1.27

という結果であった。Figure 1A の結果から、末期 NSCLC 患者へのニボルマブ投与により(ドセタキセル投与と比べ)2.8 ヶ月間寿命が延長する。ただし 24 ヶ月後にはニボルマブ投与群で 9 人、ドセタキセル投与群で 5 人の生存に留まった。ちなみに有害事象はドセタキセルに比べて二ボルマブの方が少なかった。

最後にコスト面(2017 1月時点における薬価ベース:窓口での負担額では無い)についてだが、仮に身長 164 cm、体重 60 kg の成人に両薬剤を投与した場合、

◯ニボルマブ(商品名:オプジーボ)※

20mg/2mL→ 150,200円(75,100/mL

100mg/10mL→ 729,899円(72,989/mL

3500万円/年(2017 2月には、この値より半額)

◯ドセタキセル(商品名:タキソール)

20mg/mL19,660円(ジェネリック医薬品 20mg/2mL12,552円)

80mg/4mL67,304円(ジェネリック医薬品 80mg/8mL43,164円)

178万円/年(ジェネリック医薬品:約 113万円)DuBois を使用 1.651m2

コメント

末期 NSCLC 患者を対象としているため、個人的にはコストベネフィットは低く、やはりニボルマブは高価であるなという印象(セカンドラインであることも留意)。ここは患者背景により異なるため、ニボルマブ使用の是非を問いたいわけではありません。また抗がん剤治療は 2 剤以上の併用療法が多く、今後ニボルマブも併用療法に組み込まれる可能性は充分あると思っています。

ただし、その場合、薬価をさらに下げなければ皆保険制度は崩壊しかねない(すでに崩壊しかけているかも?)。薬価下げすぎると採算が取れなくなりメーカーが販売中止するので困る。

報酬制度の見直しが迫られているのではなかろうか。それにしても抗がん剤はよく分からん。勉強を続けます。


追加情報

Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) performance-status score

Score 定義
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事、事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG:Japan Clinical Oncology Groupより表を引用

原著:Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999

https://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/docs/ctcv20_4-30-992.pdf

O’ Brien-Fleming

抗がん剤のような、市場から効果と承認スピードを求められている薬剤の場合、最終評価項目の解析を研究終了前に行い、予想以上の効果が観測された場合には研究を早期終了し、承認申請手続きに移行することがある。

Pocock 法等、他の方法より解析総数に依存せず、推定最終解析時における有意水準が比較的 0.05 に近く設定される。これにより他の方法に比べ最終解析における有意差が出やすくなるという利点がある。しかし研究開始に近い時点の中間解析では(早期であれば早期であるほど)有意水準が厳しく設定されることになるため試験の早期終了は期待できない。これは試験早期の小規模なデータのみで新薬を有効とする妥当性を担保することは困難であることと、小規模データのみでは医師等、専門家からの試験結果に対する支持を得られにくい為である。

喫煙歴

Current smoker:現在、毎日喫煙あるいは特定の頻度で数日は喫煙している

Former smoker:過去100本以上吸ったが、現在は吸っていない

Never smoked:現在吸っていない(過去吸った本数100本未満

奏効率

腫瘍の直径が半分以下になる患者割合。RECIST では長径が 70以下と定義。 

DuBois

IVRS (Interactive Voice Response System)

中央コンピュータにて割付をコントロールし、組み入れ患者は電話にて治療薬等の指示を受ける。選択バイアスやブラインド保持等、様々な試験方法に用いられている。またコスト削減や、患者情報をリアルタイムに入手できる等のメリットもある。

→   似た方法に Interactive Web Response System (IWRS) があり、こちらは Web site で指示を受ける

-Evidence never tells you what to do-



末梢動脈疾患有病率における人種差:Systematic Review & Meta-analysis(Expert Rev Cardiovasc Ther. 2017; Charge)

Ethnic differences in the prevalence of peripheral arterial disease: a systematic review and meta-analysis.

Vitalis A et al.

Expert Rev Cardiovasc Ther. 2017 Apr;15(4):327-338.

DOI: 10.1080/14779072.2017.1305890. Epub 2017 Mar 28.

PMID: 28290228

【背景】

これまでの研究では、黒人は末梢動脈疾患(PAD)の割合が高く、アジア人は白人に比べて罹患率が低いことが示されている。本研究の目的は、PADの疫学における民族差に関する文献を包括的にレビューすることである。

【方法】

システマティックレビューおよびメタアナリシスには、一般人口または糖尿病人口集団における PAD罹患の報告および民族集団における PAD有病率の比較が含まれていた。

【結果】

一般人口における PADの平均有病率は以下の通り;

 ・白人 =3.5%

 ・黒人 =6.7%

 ・アジア人 =3.7

 メタ分析は、白人と比較して、黒人(P <0.001)およびアジア人(P <0.001)の PAD罹患率が高いことを示した。

糖尿病人口における PADの平均有病率は以下の通り;

 ・白人 =17%

 ・黒人 =25.3%

 ・東アジア人 =13.5 ・南アジア人 =7.6%

 糖尿病人口では、南アジア人は白人に比べて PAD有病率が低かった(p <0.001)。黒人と白人の間に有意差はなかった。

 全般的に女性は PAD有病率が高かった。

・ 一般人口:女性 =3.8% vs. 男性 =3.2%;  p <0.001

・ 糖尿病人口:女性 =13.7% vs. 男性 =10.0%;  p <0.001

【結論】

黒人は PAD罹患率が高く、一方、白人と比較してアジア人は PAD罹患率が低かった。この違いを生み出す要因を特定するためには、さらなる研究が必要である。

【コメント】

アブストのみ。

下肢に関連する疾患についての報告。白人や黒人に比べ、アジア人の 2型糖尿病患者においては PAD罹患率が低かった。

あくまで人種差、個々人のリスク評価は別途必要。

【KEYWORDS】

Peripheral arterial disease; diabetes; epidemiology; ethnicity

ピロリ菌除菌によるリスクとベネフィットはどのくらいか?(①導入編)

背景・疑問

これまでにピロリ菌の除菌に関する記事をいくつか書いてきた。

しかし、そもそもピロリ菌の除菌は必要なのか?

過去の記事一覧

ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009-2016)

ピロリ菌の検査方法にはどんなものがありますか?

ピロリ菌検査の感度と特異度はどのくらいですか?(日本ヘリコバクター学会ガイドライン2015)

ピロリ菌の除菌治療は3剤より4剤の方が良いですか?(Lancet 2016; Charge)

目的

ピロリ菌除菌によるリスクとベネフィットを明らかにしていく。

コメント

宣言しないと頓挫しそうだったので記事にしました。

次回から本シリーズを連載していきます。

まずはベネフィットに関する論文をご紹介する予定です。

お楽しみに。

高齢高血圧患者における重度転倒外傷リスク、フレイル、降圧薬ポリファーマシー、血圧(Hypertension 2017; Charge)

Blood Pressure, Antihypertensive Polypharmacy, Frailty, and Risk for Serious Fall Injuries Among Older Treated Adults With Hypertension

Bromfield SG et al.

PMID: 28652459

 

目的

降圧薬および収縮期血圧および拡張期血圧の低値は、いくつかの研究において転倒リスク増加と関連している。高齢者の多くは脆弱性frailityの指標を有しており、転倒リスクを増加させる可能性がある。

方法

5236 REGARDS試験(Reasons for Geographic and Racial Difference in Stroke)に参加した患者において、降圧薬を服用している 65歳以上の参加者のうち、メディケアのサービス利用料金のベースラインを基に収縮期血圧、拡張期血圧、降圧薬(クラス)の服用数、重度転倒外傷リスク指標を比較した。

 収縮期血圧および拡張期血圧を測定し、降圧薬を試験訪問中の薬剤ボトルのレビュー(コンプライアンス)により評価した。脆弱性の指標には、低体格指数、認知障害、うつ症状、疲弊度、運動障害、および転倒歴が含まれていた。深刻な転倒障害は 2014年12月31日までのメディケア請求を用い、転倒に関連した骨折脳損傷または関節脱臼と定義された。

結果

中央値 6.4年では、802人(15.3%)の参加者が重度転倒外傷を負った。 1、2、または 3以上の脆弱性指標での重篤な転倒傷害の多変数調整ハザード比は、非フレイル指標と比較し、1.18(95%信頼区間CI =0.99〜1.40)、1.49(95%CI =1.19〜1.87)、2.04(95%CI =1.56〜2.67)であった。

収縮期血圧、拡張期血圧、および降圧剤の服用数は、多変量調整後の重大な転倒傷害リスクと関連していなかった。

結論

血圧や降圧薬の服薬クラスの数は関連がなかったが、フレイル指標については、高血圧治療薬を服用している高齢者の重大な転倒傷害リスクの増加と関連していた。

コメント

抄録のみ読めた文献。

フレイルティ(①低体格指数、②認知障害、③うつ症状、④疲弊度、⑤運動障害、および⑥転倒歴)は、高齢高血圧患者での重大な転倒外傷リスク増加と関連していた。効果推定値はフレイルの重症度と相関関係にありそうであった。

メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ)

背景・疑問

今日までメトホルミンによる 2型糖尿病患者の死亡や心血管イベント発生の抑制効果が示唆されている。またアメリカやイギリスでは、年齢や腎機能に関わらず第一選択薬として位置づけられている。

 

 「果たして日本人での効果はどのくらいなのか?」という観点から、まずは日常業務での薬剤活用を意識し代用のアウトカムであるヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c ;HbA1c)低下作用と 肥満指数(Body Mass Index ;BMI)との関係性について明らかにする。以下の資料を基に ”薬を使う前提” で話を進める。

 

メトグルコ®(一般名:メトホルミン塩酸塩)国内承認申請資料  

 試験名:SMP-862の 2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験

 (http://www.clinicaltrials.jp/user/cteDetail.jsp

 結論

日本人 2型糖尿病患者を対象としたメトホルミンの血糖降下作用は、BMIに関係なく一定の効果を示した。さらに本結果は標準治療への Add-onではなく、メトホルミン単独使用によるものである。しかし小規模試験であるためか各値の標準偏差が大きいことは念頭に置いておく必要がある。また元データは未公開であるため批判的吟味が難しい。

BMI(kg/m2   HbA1c(%)

・  〜19.9 —   -1.33% (n= 4)

・20.0〜24.9 —   -1.24% (n= 36)

・25.0〜29.9 —   -1.38% (n= 28)

・30.0〜34.9 — -1.19% (n= 8)

・35.0〜     —     -1.70%(n= 4)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 


試験適格基準

<選択基準>
2型糖尿病で以下の基準を満たす患者
・食事療法・運動療法のみで治療中の患者
・HbA1cが 6.5%以上 12.0%未満で、4週間以上にわたって安定している患者
・20歳以上 75歳未満の男女
・外来患者
 など

<除外基準>
・肝機能障害患者
・腎機能障害患者
・心血管系、肺機能に高度の障害のある患者、その他の低酸素血症を伴いやすい状態の患者
・乳酸アシドーシスの既往を有する患者
・脱水症の患者、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
 など

年齢: 20歳以上 74歳以下
性別: 男女


 

批判的吟味

PICOT

 P:食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な 2型糖尿病患者

 I :メトホルミン塩酸塩 750 mg/日(107例)

    メトホルミン塩酸塩 1500 mg/日(106例)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 C:プラセボ群(55例)

 O:HbA1cなど(おそらくサロゲートマーカーのみ)

 T:プラセボ対照二重盲検、並行群間比較、動的割付、14週間の follow-up、施設は日本国内のみ

 

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

 → されている。動的割付だが詳細な因子は不明。ちなみに今回の場合、HbA1cが対象になっているとマズい。

 

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

 → されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする

 

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

 →不明

 

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

 →代用のアウトカムだが読み進める。アウトカムとして HbA1cは明確だが、その他は不明

 

交絡因子は網羅的に検討されているか?

 →不明

 

Baseline は同等か?どんな患者背景?

 →不明。食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な患者ということだけ既知

 

ITT 解析されているか?

 → 不明だが、HbA1cについてはされていない。

  

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

 →憶測でしかないが、メトホルミン群における HbA1cについては、追跡率 68.4%(31.6%)と、脱落が多い印象。 そもそもの解析方法が不明なため、これ以上の検証は行わない。

 

サンプルサイズは充分か?

 →不明

 

結果は?

 →上記、結論の項を参照


コメント

論文を毛嫌いする友人のために始めてみましたが、このシリーズ需要あるのか心配。とりあえず自分用のメモとして継続しようと思います。

 メトホルミンの血糖降下作用について「他の経口血糖降下薬と比較して弱い」と感じている方もいるようですが、その原因として投与用量が少ないことと、アドヒアランスが低下してしまうことが主であると考えられます。今回の試験の場合、用量 1500 mg/日により BMIに依存せず血糖降下作用が得られています。

 上記の問題については “投薬開始時のコツ” で回避できますので今後、取り上げていきます。

 

   - Evidence never tells you what to do –




 

グレーブス(バセドウ)病の初期治療に適している薬はどれですか?(J Clin Endocrinol Metab. 2007; Free: JJCLIP#50)

Comparison of methimazole and propylthiouracil in patients with hyperthyroidism caused by Graves’ disease.

Nakamura H et al.

J Clin Endocrinol Metab. 2007.

PMID: 17389704

背景・疑問

グレーブス病(バセドウ病)に起因する甲状腺機能亢進症の治療には、今日までメチマゾール(別名:チアマゾール、商品名:メルカゾール)やプロピルチオウラシル(商品名:プロパジール、チウラジール)が使用されてきた。しかし、治療薬の選択や適切な初期用量については結論が出ていない。

結論

軽度および中等度のバセドウ病には、チアマゾール 15 mg/日が適している。また重症例では 30 mg/日での治療開始を支持する結果であった。 チアマゾールと比較すると、プロピルチオウラシルは初期治療の面で劣っていた。


試験適格基準

<組入基準>

 未治療の甲状腺機能亢進症(ただしバセドウ病に起因する)患者のみが組み入れられた。 バセドウ病の診断は日本甲状腺学会の診断ガイドライン(http://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html)に従い、臨床所見と血清フリーT4(FT4)、血清フリーT3(FT3)、甲状腺刺激ホルモン(Thyroid-Stimulating Hormone:TSH)、TSH受容体抗体(TSH Receptor Antibody:TRAb)、123I(ヨード)あるいは99mTc(テクネシウム)の取り込み、以上から診断した。

<除外基準>

16歳未満、妊婦、甲状腺摘出術またはラジオヨード治療後の再発患者、抗甲状腺薬(Anti-Thyroid Drug:ATD)による治療歴あり、心不全などの重篤な合併症、甲状腺機能に影響を与える可能性のあるグルココルチコイドステロイドまたは薬物使用患者。


批判的吟味

PICO

 P未治療のグレーブス病患者 396例
 Iチアマゾール 30 mg/日(135例)
 Cプロピルチオウラシル 300 mg(104例)

          チアマゾール 15 mg(147例)
 OFT4または FT3の正常化、副作用の頻度  

   (4、8および12週目に測定)
 Tオープンラベル、ランダム化比較試験、Triple arm、施設は日本国内の4つの病院(①Ito Hospital in Tokyo, ②Kuma Hospital in Kobe, ③Sumire Hospital in Osaka, and ④Hamamatsu University Hospital in Hamamatsu)

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

→ されている。

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

→ されていないが、アウトカムとの相性は問題ないと考えられる。

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

→されていない。ベースラインをみると TRAbの値に差がありそうだが、試験結果から FT4および FT3の正常化にあまり影響はなさそう。両薬剤ともヨウ化物ペルオキシダーゼを阻害し、FT4および FT3を低下させる。

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

→代用のアウトカムであるが、FT4および FT3の値が動悸や食欲増進、体重減少、発汗等に関与しているため、明確ではあると考えられる。

交絡因子は網羅的に検討されているか?

→体重や心電図、脈拍、FT4、FT3、TSHがあっても良いのではないでしょうか。

Baseline は同等か?どんな患者背景?

→あまり差はなさそうだが、TRAb、男女比に群間差がありそう。平均 40歳くらい。

ITT 解析されているか?

→ されていない。

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

→やや脱落多い気がする。あと結果の分母が変わるところ、気になります。

   ①チアマゾール 30 mg:72.6%(27.4%)
   ②プロピルチオウラシル 300 mg:71.1% (28.9%)
   ③チアマゾール 15 mg:84.4%(15.6%)

サンプルサイズは充分か?

→計算されている(α=0.05, power=80%)。サンプル数は各群 82例以上必要だが、脱落があるためプロピルチオウラシル群は 81例。個人的に 1例足りないぐらいは問題ないと思う。

結果は?

→12週目における FT4正常化は、

     メルカゾール 30 mg/日:96.5%(82/85例)

     プロピルチオウラシル 300 mg:78.3% (54/69例)

     メルカゾール 15 mg:86.2%(94/109例)

    

→12週目における FT3正常化は、
     メルカゾール 30 mg/日:90.0%(72/80例)
     プロピルチオウラシル 300 mg:62.9% (39/62例)
     メルカゾール 15 mg:72.6%(78/98例)

 

→サブグループ解析:

   FT4 =7 ng/dL以上重症例(64例)においても、メルカゾール 30 mgは、プロピルチオウラシル 300 mg(at 8 and12 wk)、メルカゾール 15 mg(at 8 wk)に比べ FT4正常化が優れていた。

 

→サブグループ解析:

   FT4 =7 ng/dL未満軽症〜中等度例においては、3群間で明らかな差は無かった。

 

→有害事象

     ・肝毒性はプロピルチオウラシルで多かった。またチアマゾールにおいては、30 mgに比べ 15 mgで肝毒性が少なかった。

     ・白血球減少症については、チアマゾール 30 mgで 0例(0%)、プロピルチオウラシルで 5例(4.8%)、チアマゾール 15 mgで 1例(0.7%)。

     ・白血球減少症の中でも、特に好中球が減少する無顆粒球症は、本試験では 1例も認められなかった。

     ・薬疹/蕁麻疹については、チアマゾール 30 mgで 29例(22.3%)、プロピルチオウラシルで 23例(22.1%)、チアマゾール 15 mgで 9例(6.6%)。


コメント

治療開始 4、8、12週後で、分母が変化している点がきになる(特に本文の Figure 1)。邪推かもしれないけど、いいとこ取りじゃないよね?まぁ、10年前の論文なので “頑張って試験完遂した” と受け取りました。

 

結果をそのまま受け取ると、妊娠や授乳中、薬疹がなければチアマゾールを使った方が良さそう。

 

患者の状態によって 30 mgを使うか、15 mgを使うのか、というところが難しそう。動悸時に βブロッカー使用可だったようなので、各群どのくらい使用したか知りたかった。

 

個人的な経験では、30 mg処方・2週間で治療開始する医師が多いと感じる。

 

ここで JJCLIP#50の仮想症例について、私なりの見解ですが、妊娠や授乳中で無い 40代女性、軽症〜中等度のバセドウ病患者に対しては、まずチアマゾール 15 mg/日を 2週間服用で良いのではないかと思った。薬疹が認められたら、プロピルチオウラシルでどうかしら。肝機能、血球については随時フォロー。あと甲状腺のエコーはいるのかな?

 

余談ですが、バセドウってドイツ語だったんですね。知りませんでした。英語圏ではグレーブスが一般的なようです。勉強不足を痛感。

 

ちなみに 1日当たりの薬価(2017年11月26日現在)は、

   ・メルカゾール錠 5 mg ——— 9.6円/錠

   ・チウラジール錠 50 mg ——— 9.6円/錠(プロパジール錠 50 mgも同価)

従って、

   ・チアマゾール 30 mg → 57.6円/6錠/日

   ・プロピルチオウラシル 300 mg → 57.6円/6錠/日

   ・チアマゾール 15 mg → 28.8円/3錠/日

 

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情報リテラシーを学び、実践し、振り返る 〜立てよ、薬剤師〜

立てよ、薬剤師プロジェクト

はじめに

論考をAHEADMAP会報誌秋号に寄稿しました!!

 

以下、序文を一部掲載;

[はじめに ~意思決定は誰が行うのか~]

エビデンスや論文と聞くと、ある種のアレルギー反応を示す方に出会う。これは私の勝手な見解である が、論文情報というのは、実はかなり曖昧なものである。しかし、このような曖昧な情報を、絶対的な、 抗えないような、あるいは融通の利かないような存在に祭り上げてしまっていることこそが、ある種のアレ ルギー反応に繋がっているのかもしれない。もしそうなのであれば、これは誤りであると断言できる。

まず臨床判断における4要素(図1)を見て欲しい。この図から、患者のおかれた環境や臨床状態、 患者の意向、そしてエビデンスを統合し “臨床経験や専門知識を用いて” 最終的な臨床的判断を 行うよう推奨していることが分かる。また(図1)の論文の著者は次のような言葉を残している。

− Evidence does not make decisions, people do −

R. Brian Haynes

つまり、論文情報は4つの輪の1つでしかなく、患者を取り巻く状況によって、その表情を変え、あくま で意思決定は患者と、それを支える医療従事者が行うのである。以下、仮想症例で考えてみよう。

コレステロール値が基準値より少し高いが、他の既往歴や家族歴の無い患者。患者本人は薬を 使いたくないのだが言い出せず、担当医がスタチン系薬剤を処方した。そして、その結果、コレステロー ル値は正常値範囲内に納まったが、血糖値が高くなってしまい2型糖尿病と診断され、血糖降下薬を 追加されてしまった。この仮想症例に触れてどう感じただろうか?極端な例で情報が少なく分かりづら いだろうか?ここで言いたいこと、それは薬のリスク/ベネフィットを評価しようということである。

スタチン系薬剤の使用が新規の糖尿病発症リスクを増加させることが過去に示唆されている。1)実 は糖尿病発症リスク増加について添付文書にも記載されている薬剤もある。しかし、どの程度のリスク なのかは示されていない。より正確に薬剤のリスクベネフィットを評価するためには、やはり一次情報で ある論文に触れる必要があると言わざるを得ない。

以上の情報を知っているか否か、論文の妥当性を評価できているかによって、治療方針は変わって いたかもしれない。定期検診のみの経過観察も選択肢の1つとしてあり得たのではなかろうか。


(以下の画像をクリックすると全文ダウンロードできます!)

aheadmap.jimdo.com 

 

奇しくも、ある方と一部内容がかぶりました。その方、「るるー主」さんのブログがこちら

ph-lelouch.com 

EBM実践を広めるには?

私は常々、日常業務に Evidence-Based MedicineEBM)実践を組み込みたいと考えています。

 

そして医療従事者以外にも EBM実践を広めるためには、つまり一般化するにはどのようにしたら良いかと考えております。

 

双方向性の情報リテラシー向上?

それには「情報を発信する側」と「情報を受け取る側」、双方のリテラシー向上が肝であるという考えに至りました。

 

そもそもリテラシー literacy”とは何か?

以下、デジタル大辞泉から引用

リテラシー(literacy

1 読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。
2 コンピューターについての知識および利用能力。→コンピューターリテラシー
3 情報機器を利用して、膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、活用する能力。→情報リテラシー

 

情報リテラシーの定義

また上記3の情報リテラシーの定義 1989年に確立されています(クリックで別記事にとびます)。

個人的に感じていることですが情報発信を行っていく中で、自然と情報を受け取る際にも内容を吟味できるようになりました。まだまだ修行中の身ではありますが、継続することで新たに見えてくる景色があるのではないかと期待しております。

つまり受け取る情報を吟味するためには、一次情報に当たり、自分なりに咀嚼し、情報を発信し続けて行くことが肝要ではないか、

そして情報リテラシー取得に繋がるのではないか、ということです。

あとは初めの一歩を踏み出すかどうか、、、立てよ、薬剤師!!

 

 

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