ピロリ菌除菌によるリスクとベネフィットはどのくらいか?(①導入編)

背景・疑問

これまでにピロリ菌の除菌に関する記事をいくつか書いてきた。

しかし、そもそもピロリ菌の除菌は必要なのか?

過去の記事一覧

ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009-2016)

ピロリ菌の検査方法にはどんなものがありますか?

ピロリ菌検査の感度と特異度はどのくらいですか?(日本ヘリコバクター学会ガイドライン2015)

ピロリ菌の除菌治療は3剤より4剤の方が良いですか?(Lancet 2016; Charge)

目的

ピロリ菌除菌によるリスクとベネフィットを明らかにしていく。

コメント

宣言しないと頓挫しそうだったので記事にしました。

次回から本シリーズを連載していきます。

まずはベネフィットに関する論文をご紹介する予定です。

お楽しみに。

高齢高血圧患者における重度転倒外傷リスク、フレイル、降圧薬ポリファーマシー、血圧(Hypertension 2017; Charge)

Blood Pressure, Antihypertensive Polypharmacy, Frailty, and Risk for Serious Fall Injuries Among Older Treated Adults With Hypertension

Bromfield SG et al.

PMID: 28652459

 

目的

降圧薬および収縮期血圧および拡張期血圧の低値は、いくつかの研究において転倒リスク増加と関連している。高齢者の多くは脆弱性frailityの指標を有しており、転倒リスクを増加させる可能性がある。

方法

5236 REGARDS試験(Reasons for Geographic and Racial Difference in Stroke)に参加した患者において、降圧薬を服用している 65歳以上の参加者のうち、メディケアのサービス利用料金のベースラインを基に収縮期血圧、拡張期血圧、降圧薬(クラス)の服用数、重度転倒外傷リスク指標を比較した。

 収縮期血圧および拡張期血圧を測定し、降圧薬を試験訪問中の薬剤ボトルのレビュー(コンプライアンス)により評価した。脆弱性の指標には、低体格指数、認知障害、うつ症状、疲弊度、運動障害、および転倒歴が含まれていた。深刻な転倒障害は 2014年12月31日までのメディケア請求を用い、転倒に関連した骨折脳損傷または関節脱臼と定義された。

結果

中央値 6.4年では、802人(15.3%)の参加者が重度転倒外傷を負った。 1、2、または 3以上の脆弱性指標での重篤な転倒傷害の多変数調整ハザード比は、非フレイル指標と比較し、1.18(95%信頼区間CI =0.99〜1.40)、1.49(95%CI =1.19〜1.87)、2.04(95%CI =1.56〜2.67)であった。

収縮期血圧、拡張期血圧、および降圧剤の服用数は、多変量調整後の重大な転倒傷害リスクと関連していなかった。

結論

血圧や降圧薬の服薬クラスの数は関連がなかったが、フレイル指標については、高血圧治療薬を服用している高齢者の重大な転倒傷害リスクの増加と関連していた。

コメント

抄録のみ読めた文献。

フレイルティ(①低体格指数、②認知障害、③うつ症状、④疲弊度、⑤運動障害、および⑥転倒歴)は、高齢高血圧患者での重大な転倒外傷リスク増加と関連していた。効果推定値はフレイルの重症度と相関関係にありそうであった。

メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ)

背景・疑問

今日までメトホルミンによる 2型糖尿病患者の死亡や心血管イベント発生の抑制効果が示唆されている。またアメリカやイギリスでは、年齢や腎機能に関わらず第一選択薬として位置づけられている。

 

 「果たして日本人での効果はどのくらいなのか?」という観点から、まずは日常業務での薬剤活用を意識し代用のアウトカムであるヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c ;HbA1c)低下作用と 肥満指数(Body Mass Index ;BMI)との関係性について明らかにする。以下の資料を基に ”薬を使う前提” で話を進める。

 

メトグルコ®(一般名:メトホルミン塩酸塩)国内承認申請資料  

 試験名:SMP-862の 2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験

 (http://www.clinicaltrials.jp/user/cteDetail.jsp

 結論

日本人 2型糖尿病患者を対象としたメトホルミンの血糖降下作用は、BMIに関係なく一定の効果を示した。さらに本結果は標準治療への Add-onではなく、メトホルミン単独使用によるものである。しかし小規模試験であるためか各値の標準偏差が大きいことは念頭に置いておく必要がある。また元データは未公開であるため批判的吟味が難しい。

BMI(kg/m2   HbA1c(%)

・  〜19.9 —   -1.33% (n= 4)

・20.0〜24.9 —   -1.24% (n= 36)

・25.0〜29.9 —   -1.38% (n= 28)

・30.0〜34.9 — -1.19% (n= 8)

・35.0〜     —     -1.70%(n= 4)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 


試験適格基準

<選択基準>
2型糖尿病で以下の基準を満たす患者
・食事療法・運動療法のみで治療中の患者
・HbA1cが 6.5%以上 12.0%未満で、4週間以上にわたって安定している患者
・20歳以上 75歳未満の男女
・外来患者
 など

<除外基準>
・肝機能障害患者
・腎機能障害患者
・心血管系、肺機能に高度の障害のある患者、その他の低酸素血症を伴いやすい状態の患者
・乳酸アシドーシスの既往を有する患者
・脱水症の患者、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
 など

年齢: 20歳以上 74歳以下
性別: 男女


 

批判的吟味

PICOT

 P:食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な 2型糖尿病患者

 I :メトホルミン塩酸塩 750 mg/日(107例)

    メトホルミン塩酸塩 1500 mg/日(106例)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 C:プラセボ群(55例)

 O:HbA1cなど(おそらくサロゲートマーカーのみ)

 T:プラセボ対照二重盲検、並行群間比較、動的割付、14週間の follow-up、施設は日本国内のみ

 

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

 → されている。動的割付だが詳細な因子は不明。ちなみに今回の場合、HbA1cが対象になっているとマズい。

 

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

 → されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする

 

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

 →不明

 

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

 →代用のアウトカムだが読み進める。アウトカムとして HbA1cは明確だが、その他は不明

 

交絡因子は網羅的に検討されているか?

 →不明

 

Baseline は同等か?どんな患者背景?

 →不明。食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な患者ということだけ既知

 

ITT 解析されているか?

 → 不明だが、HbA1cについてはされていない。

  

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

 →憶測でしかないが、メトホルミン群における HbA1cについては、追跡率 68.4%(31.6%)と、脱落が多い印象。 そもそもの解析方法が不明なため、これ以上の検証は行わない。

 

サンプルサイズは充分か?

 →不明

 

結果は?

 →上記、結論の項を参照


コメント

論文を毛嫌いする友人のために始めてみましたが、このシリーズ需要あるのか心配。とりあえず自分用のメモとして継続しようと思います。

 メトホルミンの血糖降下作用について「他の経口血糖降下薬と比較して弱い」と感じている方もいるようですが、その原因として投与用量が少ないことと、アドヒアランスが低下してしまうことが主であると考えられます。今回の試験の場合、用量 1500 mg/日により BMIに依存せず血糖降下作用が得られています。

 上記の問題については “投薬開始時のコツ” で回避できますので今後、取り上げていきます。

 

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グレーブス(バセドウ)病の初期治療に適している薬はどれですか?(J Clin Endocrinol Metab. 2007; Free: JJCLIP#50)

Comparison of methimazole and propylthiouracil in patients with hyperthyroidism caused by Graves’ disease.

Nakamura H et al.

J Clin Endocrinol Metab. 2007.

PMID: 17389704

背景・疑問

グレーブス病(バセドウ病)に起因する甲状腺機能亢進症の治療には、今日までメチマゾール(別名:チアマゾール、商品名:メルカゾール)やプロピルチオウラシル(商品名:プロパジール、チウラジール)が使用されてきた。しかし、治療薬の選択や適切な初期用量については結論が出ていない。

結論

軽度および中等度のバセドウ病には、チアマゾール 15 mg/日が適している。また重症例では 30 mg/日での治療開始を支持する結果であった。 チアマゾールと比較すると、プロピルチオウラシルは初期治療の面で劣っていた。


試験適格基準

<組入基準>

 未治療の甲状腺機能亢進症(ただしバセドウ病に起因する)患者のみが組み入れられた。 バセドウ病の診断は日本甲状腺学会の診断ガイドライン(http://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html)に従い、臨床所見と血清フリーT4(FT4)、血清フリーT3(FT3)、甲状腺刺激ホルモン(Thyroid-Stimulating Hormone:TSH)、TSH受容体抗体(TSH Receptor Antibody:TRAb)、123I(ヨード)あるいは99mTc(テクネシウム)の取り込み、以上から診断した。

<除外基準>

16歳未満、妊婦、甲状腺摘出術またはラジオヨード治療後の再発患者、抗甲状腺薬(Anti-Thyroid Drug:ATD)による治療歴あり、心不全などの重篤な合併症、甲状腺機能に影響を与える可能性のあるグルココルチコイドステロイドまたは薬物使用患者。


批判的吟味

PICO

 P未治療のグレーブス病患者 396例
 Iチアマゾール 30 mg/日(135例)
 Cプロピルチオウラシル 300 mg(104例)

          チアマゾール 15 mg(147例)
 OFT4または FT3の正常化、副作用の頻度  

   (4、8および12週目に測定)
 Tオープンラベル、ランダム化比較試験、Triple arm、施設は日本国内の4つの病院(①Ito Hospital in Tokyo, ②Kuma Hospital in Kobe, ③Sumire Hospital in Osaka, and ④Hamamatsu University Hospital in Hamamatsu)

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

→ されている。

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

→ されていないが、アウトカムとの相性は問題ないと考えられる。

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

→されていない。ベースラインをみると TRAbの値に差がありそうだが、試験結果から FT4および FT3の正常化にあまり影響はなさそう。両薬剤ともヨウ化物ペルオキシダーゼを阻害し、FT4および FT3を低下させる。

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

→代用のアウトカムであるが、FT4および FT3の値が動悸や食欲増進、体重減少、発汗等に関与しているため、明確ではあると考えられる。

交絡因子は網羅的に検討されているか?

→体重や心電図、脈拍、FT4、FT3、TSHがあっても良いのではないでしょうか。

Baseline は同等か?どんな患者背景?

→あまり差はなさそうだが、TRAb、男女比に群間差がありそう。平均 40歳くらい。

ITT 解析されているか?

→ されていない。

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

→やや脱落多い気がする。あと結果の分母が変わるところ、気になります。

   ①チアマゾール 30 mg:72.6%(27.4%)
   ②プロピルチオウラシル 300 mg:71.1% (28.9%)
   ③チアマゾール 15 mg:84.4%(15.6%)

サンプルサイズは充分か?

→計算されている(α=0.05, power=80%)。サンプル数は各群 82例以上必要だが、脱落があるためプロピルチオウラシル群は 81例。個人的に 1例足りないぐらいは問題ないと思う。

結果は?

→12週目における FT4正常化は、

     メルカゾール 30 mg/日:96.5%(82/85例)

     プロピルチオウラシル 300 mg:78.3% (54/69例)

     メルカゾール 15 mg:86.2%(94/109例)

    

→12週目における FT3正常化は、
     メルカゾール 30 mg/日:90.0%(72/80例)
     プロピルチオウラシル 300 mg:62.9% (39/62例)
     メルカゾール 15 mg:72.6%(78/98例)

 

→サブグループ解析:

   FT4 =7 ng/dL以上重症例(64例)においても、メルカゾール 30 mgは、プロピルチオウラシル 300 mg(at 8 and12 wk)、メルカゾール 15 mg(at 8 wk)に比べ FT4正常化が優れていた。

 

→サブグループ解析:

   FT4 =7 ng/dL未満軽症〜中等度例においては、3群間で明らかな差は無かった。

 

→有害事象

     ・肝毒性はプロピルチオウラシルで多かった。またチアマゾールにおいては、30 mgに比べ 15 mgで肝毒性が少なかった。

     ・白血球減少症については、チアマゾール 30 mgで 0例(0%)、プロピルチオウラシルで 5例(4.8%)、チアマゾール 15 mgで 1例(0.7%)。

     ・白血球減少症の中でも、特に好中球が減少する無顆粒球症は、本試験では 1例も認められなかった。

     ・薬疹/蕁麻疹については、チアマゾール 30 mgで 29例(22.3%)、プロピルチオウラシルで 23例(22.1%)、チアマゾール 15 mgで 9例(6.6%)。


コメント

治療開始 4、8、12週後で、分母が変化している点がきになる(特に本文の Figure 1)。邪推かもしれないけど、いいとこ取りじゃないよね?まぁ、10年前の論文なので “頑張って試験完遂した” と受け取りました。

 

結果をそのまま受け取ると、妊娠や授乳中、薬疹がなければチアマゾールを使った方が良さそう。

 

患者の状態によって 30 mgを使うか、15 mgを使うのか、というところが難しそう。動悸時に βブロッカー使用可だったようなので、各群どのくらい使用したか知りたかった。

 

個人的な経験では、30 mg処方・2週間で治療開始する医師が多いと感じる。

 

ここで JJCLIP#50の仮想症例について、私なりの見解ですが、妊娠や授乳中で無い 40代女性、軽症〜中等度のバセドウ病患者に対しては、まずチアマゾール 15 mg/日を 2週間服用で良いのではないかと思った。薬疹が認められたら、プロピルチオウラシルでどうかしら。肝機能、血球については随時フォロー。あと甲状腺のエコーはいるのかな?

 

余談ですが、バセドウってドイツ語だったんですね。知りませんでした。英語圏ではグレーブスが一般的なようです。勉強不足を痛感。

 

ちなみに 1日当たりの薬価(2017年11月26日現在)は、

   ・メルカゾール錠 5 mg ——— 9.6円/錠

   ・チウラジール錠 50 mg ——— 9.6円/錠(プロパジール錠 50 mgも同価)

従って、

   ・チアマゾール 30 mg → 57.6円/6錠/日

   ・プロピルチオウラシル 300 mg → 57.6円/6錠/日

   ・チアマゾール 15 mg → 28.8円/3錠/日

 

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情報リテラシーを学び、実践し、振り返る 〜立てよ、薬剤師〜

立てよ、薬剤師プロジェクト

はじめに

論考をAHEADMAP会報誌秋号に寄稿しました!!

 

以下、序文を一部掲載;

[はじめに ~意思決定は誰が行うのか~]

エビデンスや論文と聞くと、ある種のアレルギー反応を示す方に出会う。これは私の勝手な見解である が、論文情報というのは、実はかなり曖昧なものである。しかし、このような曖昧な情報を、絶対的な、 抗えないような、あるいは融通の利かないような存在に祭り上げてしまっていることこそが、ある種のアレ ルギー反応に繋がっているのかもしれない。もしそうなのであれば、これは誤りであると断言できる。

まず臨床判断における4要素(図1)を見て欲しい。この図から、患者のおかれた環境や臨床状態、 患者の意向、そしてエビデンスを統合し “臨床経験や専門知識を用いて” 最終的な臨床的判断を 行うよう推奨していることが分かる。また(図1)の論文の著者は次のような言葉を残している。

− Evidence does not make decisions, people do −

R. Brian Haynes

つまり、論文情報は4つの輪の1つでしかなく、患者を取り巻く状況によって、その表情を変え、あくま で意思決定は患者と、それを支える医療従事者が行うのである。以下、仮想症例で考えてみよう。

コレステロール値が基準値より少し高いが、他の既往歴や家族歴の無い患者。患者本人は薬を 使いたくないのだが言い出せず、担当医がスタチン系薬剤を処方した。そして、その結果、コレステロー ル値は正常値範囲内に納まったが、血糖値が高くなってしまい2型糖尿病と診断され、血糖降下薬を 追加されてしまった。この仮想症例に触れてどう感じただろうか?極端な例で情報が少なく分かりづら いだろうか?ここで言いたいこと、それは薬のリスク/ベネフィットを評価しようということである。

スタチン系薬剤の使用が新規の糖尿病発症リスクを増加させることが過去に示唆されている。1)実 は糖尿病発症リスク増加について添付文書にも記載されている薬剤もある。しかし、どの程度のリスク なのかは示されていない。より正確に薬剤のリスクベネフィットを評価するためには、やはり一次情報で ある論文に触れる必要があると言わざるを得ない。

以上の情報を知っているか否か、論文の妥当性を評価できているかによって、治療方針は変わって いたかもしれない。定期検診のみの経過観察も選択肢の1つとしてあり得たのではなかろうか。


(以下の画像をクリックすると全文ダウンロードできます!)

aheadmap.jimdo.com 

 

奇しくも、ある方と一部内容がかぶりました。その方、「るるー主」さんのブログがこちら

ph-lelouch.com 

EBM実践を広めるには?

私は常々、日常業務に Evidence-Based MedicineEBM)実践を組み込みたいと考えています。

 

そして医療従事者以外にも EBM実践を広めるためには、つまり一般化するにはどのようにしたら良いかと考えております。

 

双方向性の情報リテラシー向上?

それには「情報を発信する側」と「情報を受け取る側」、双方のリテラシー向上が肝であるという考えに至りました。

 

そもそもリテラシー literacy”とは何か?

以下、デジタル大辞泉から引用

リテラシー(literacy

1 読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。
2 コンピューターについての知識および利用能力。→コンピューターリテラシー
3 情報機器を利用して、膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、活用する能力。→情報リテラシー

 

情報リテラシーの定義

また上記3の情報リテラシーの定義 1989年に確立されています(クリックで別記事にとびます)。

個人的に感じていることですが情報発信を行っていく中で、自然と情報を受け取る際にも内容を吟味できるようになりました。まだまだ修行中の身ではありますが、継続することで新たに見えてくる景色があるのではないかと期待しております。

つまり受け取る情報を吟味するためには、一次情報に当たり、自分なりに咀嚼し、情報を発信し続けて行くことが肝要ではないか、

そして情報リテラシー取得に繋がるのではないか、ということです。

あとは初めの一歩を踏み出すかどうか、、、立てよ、薬剤師!!

 

 

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薬はどのくらいで安定した効果が得られ、どのくらいで体内から消失しますか?(JAGS. 1976; Charge)

背景・疑問

薬はどのくらいで安定した効果、つまり定常状態に達するのか。そして、どのくらいで体内から消失するのか。

結論

Ritschel(リッチェル)理論1) に基づくと、定常状態に達する薬の場合、半減期の 5倍の時間で反復投与により定常状態に達する。従って、服薬中止により半減期の(4〜)5倍の時間で体内から消失する。

定常状態に達する薬は、下記の式で 3以下を示す。

 

 

f:id:noir-van13:20171025001758p:plain

 


実例:アムロジピン口腔内崩壊錠の場合

健常成人が アムロジピン口腔内崩壊錠 5mg3)(1日 1回)

服用の場合、

 

  投与間隔 = 24 (時間)

  半減期 t1/2 = 36.5±4.2 (時間)

 

STEP 1:定常状態に達する薬であるか?

 投与間隔 24 / 半減期 36.5 = 0.657…

    ≦ 3であるためアムロジピンは定常状態に達する薬。

 

STEP 2:どのくらいで定常状態に達するか?

  36.5 × 5 = 182.5

  ➡️ 7.6041…(182.5 / 24)

    つまり毎日服用すると 7.6日で定常状態に達する。

 

 

申請時の資料ではアムロジピン錠 2.5mgを 14日間反復投与した場合、プラトーに達したのは 6日目以降(参考文献3を参照)。

 

 

ちなみに上記の式で解決できない薬剤もあります(membrane approach など)。こちらについては、そのうち記事にしたいと思います。

急いでいる方は参考文献の2を読んでみると良いかと思います。

 

 

参考文献・資料

1.Ritschel WA. Pharmaco-kinetics approach to drug dosing in the aged. Journal of the American Geriatrics Society 24; 344-354: 1976. 

2.山本雄一郎  薬局で使える実践薬学(通称:鈍器)日経BP社 (2017/3/2) ISBN-10: 4822239616.  ISBN-13: 978-4822239619

3.ノルバスク錠  添付文書(最終アクセス日:2017年10月23日)

 

 

 

-Evidence never tells you what to do-




 

本年もありがとうございました!2018年もよろしくお願いします!

本ブログにご訪問くださり誠にありがとうございます。

論文情報を薬剤師業務に活かせるのではないかと思い、書き始めたわけですが、なんやかんや色々やってるうちに2017年も年の瀬です。

来年はもう少し記事更新の頻度を上げていきたいと考えていますが、どうなることやら。

仕事もプライベートも充実させたいですし、薬剤師としてレベルアップしていきたいとも考えています。

本年は2016年以上に出会いや別れ、サプライズが多く、哀しみだけでなく非常に実りのある年でした。

印象的な出来事としては、AHEADMAP会報誌へ寄稿できたことです。とても嬉しかったです。

気の向くまま、想いの向かうまま、取り留めのないことを綴っているような本ブログを、2018年もどうぞよろしくお願いいたします!

根本真吾

-Evidence never tells you what to do-




SGLT2阻害薬は 2型糖尿病患者の全死亡リスクを低下できますか?〜Systematic Review & Meta Analysis〜(Acta Diabetol 2017; Charge)

Effects of SGLT-2 inhibitors on mortality and cardiovascular events: a comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials.

Monami M et al.

Acta Diabetol. 2017 Jan;54(1):19-36. doi: 10.1007/s00592-016-0892-7. Epub 2016 Aug 4.

PMID: 27488726

プロトコール文献

以下のサイトを参照:

http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.asp?ID=CRD42015029573.

私的背景

2017年7月23日に開催された EBM-Tokyoに参加し、上記の Systematic Review & Meta Analysis論文を読んだ。その際、RevMan5という Meta-Analysisの実施および作図を行えるソフトを使用し、本論文を吟味している先生に出逢い、触発され、自身でも試したくなった。再度、批判的吟味しつつ結果をまとめたい。

結論

本論文の結果は 2015年 NEJMに掲載された EMPA-REG OUTCOMEの結果に引っ張られているため新規性は無く有用性も低い。SGLT-2阻害薬の有効性については依然として controversial。


PICOT

P: 2型糖尿病

I : Sodium-Glucose coTransporter 2 inhibitor (SGLT-2阻害薬)の使用

C: プラセボあるいは SGLT-2阻害薬以外の薬剤

O: principal    — 全死亡、心血管死

  secondary — 心筋梗塞、脳卒中

T: 予防・治療、ランダム化比較試験のシステマティックレビュー&メタ解析


批判的吟味

使用した文献データベースは何か?

MEDLINE(Pubmed)、Food and Drug Administration(FDA)、European Medicines Agency(EMA)、www.clinicaltrials.gov Web site(clinicaltrials.gov)

検索語は?

SGLT-2 inhibitor(dapagliflozin, empagliflozin, canagliflozin, ipragliflozin, ertugliflozin, luseogliflozin)

研究の種類は?

Randamized Clinical Trial(RCT)

参考文献まで調べたか?

不明(それっぽい記載はあるが明確な記載無し)

個々の研究者に連絡を取ったか?

本文に記載はないが、恐らく取っていない(論文 Fig.1参照)

出版されていない研究も探したか?

探した(FDA、EMA、clinicaltrials.gov)

同じ研究が複数報告されているか?

本文中に記載はないが、論文 Fig.1より排除されていると判断した

英語以外で書かれた論文も探したか?

英語のみ(プロトコール論文参照)

研究は網羅的に集められたか?(出版バイアスは無いか?)

概ね集められていると判断した(本文ファンネルプロットを参照)

集められた研究の評価はどのように行われたか?(各研究の評価は妥当か?)

2人の研究者が独立して行い、意見が分かれたときは3人目が判断した

評価基準は明確か?(Risk of Biasの評価基準は?)

明確(Cochrane Collaboration’s toolを使用)

研究の異質性は検討されたか?

I2 統計量を用い検討されているが表現が古い。P値が 0.1より小さい(つまり異質性が低い)か否かで表現されている。近年では I2=50%のように表現されることが多い

最終的に残った研究数は?

71件、うち統合されたのは 32件(zero event studyを除外)

結果は統合されたか?

統合された。基本的には Rondam-effect modelを使用

Funding sources/sponsors

None

Conflict of interest

Matteo Monami has received speaking fees from Bristol Myers Squibb, Eli-Lilly, Merck, Novonordisk, Merck, and Takeda; and research grants from Bristol Myers Squibb.

Ilaria Dicembrini has no conflicts of interest.

Edoardo Mannucci has received consultancy fees from Merck and Novartis; speaking fees from Astra Zeneca, Bristol Myers Squibb, Merck, and Novartis; and research grants from Merck, Novartis, and Takeda.


結果は?

・全死亡 MH-OR =0.70 [95%信頼区間 0.59〜0.83], p < 0.001

・心血管死 MH-OR =0.43 [0.36〜0.53], p < 0.001

・心筋梗塞 MH-OR =0.77 [0.63〜0.94], p < 0.01

・脳卒中 MH-OR =1.09 [0.86〜1.38], p = 0.50

 

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Fig.1  全死亡のフォレストプロット(RevMan 5 | Cochrane Community を使用し作成:計 32件の RCTを統合)

 

 

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Fig.2  統合された 32件の RCTを用いたファンネルプロット(論文中には 71件の RCTの結果が記載されている)

 


コメント

Fig.1をみてみると Weight、つまり統合された結果に対する各研究の重み付けは Zinman (1が 77.1%と一番多い。この研究が EMPA-REG OUTCOMEである。つまり本論文の結果は、1つの大規模な RCTに引っ張られているだけであり、新規性は乏しい。

 

そして EMPA-REG OUTCOMEを取り除いた結果が以下である。

 

f:id:noir-van13:20170730015136p:plain

Fig.3  EMPA-REG OUTCOMEを取り除いた全死亡の統合結果(計 31件)

 

EMPA-REG OUTCOMEを統合してもしなくても異質性は 0%だが、取り除いたことでオッズ比が 1をまたいでしまった(OR =0.79, 95%CI 0.56〜1.11)。

 

1件の RCTの結果のみ(今回の場合は EMPA-REG OUTCOME trial)では薬剤効果を判定するのは難しいと考えられる。つまり現時点では SGLT-2阻害薬使用により全死亡のリスクは、オッズ比で 0.56〜1.11であったということ(SGLT-2阻害薬は使わないようにしましょう!とは言っていません。誰に使うかは非常に悩ましいところ)。そしてオッズ比を使用しているところが肝だと感じる文献です。リスク比やハザード比と異なり、オッズ比はリスクの直接的な判断ができません。オッズ比からリスク比に換算する必要があると考えられます(→準備中です)。

 

また本論文の作成過程が “正確に” 行われたのかについては非常に疑問です。引用先の参考文献の番号が異なっていたり、参考文献には記載のない著者名が本文中に記されていたり、principal outcome以外の異質性が記されていなかったり、集めてきた研究の Risk of Bias評価が誤っていたり等々、てんこ盛りです。本論文の筆頭著者は、糖尿病研究ではかなり有名な人物のようですが、非常に残念でなりません。Fundingは無いようですが COIには注意したい。

 

 

-Evidence never tells you what to do-




 

手の洗い方にも指針がありますか? (WHO 2009)

私的背景

インフルエンザや急性上気道炎の患者も減ってきて、ひとまず薬局内が落ち着きかけた時、ふと気になったことがある。診断や薬物治療にガイドラインがあるように “手洗い” にもガイドラインがあるのだろうか?

 

厚生労働省はインフルエンザの予防啓発に以下のようなポスターを使用(2016年11月発行)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/poster28.pdf

 

マメな手荒いと、飛沫感染予防の為にマスク等で咳をまき散らかさないことである(ちなみに『うがい』は数年前に効果が薄いという研究結果を基にポスターから削除された)。

World Health Organization (WHO) が 2009年に手指衛生ガイドラインを発表

原文:

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/70126/1/WHO_IER_PSP_2009.07_eng.pdf

 

日本語訳(発行元:新潟県立六日町病院):

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/70126/12/WHO_IER_PSP_2009.07_jpn.pdf

→ 日本語での要約があるのは非常にありがたい。

手の洗い方

以下、一部引用:

擦式アルコール製剤

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→ 手ぴかジ◯ルとか息子とやんわり使用していたけど、ビタビタに掌いっぱいにした方が効果が高いみたい。意外。

石鹸と流水

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→ アルコール製剤の時も思ったけど、めちゃくちゃ時間かかる

その手は安全ですか?

これだけ丁寧に洗えば、確かに手の汚れは落ちるかもしれない。

ガイドライン使用あるいは短時間の手洗いと、長時間の手洗い(例えば 30秒以上とか)とを比較した研究あったら良いのにな。Open-label になるだろうから、バイアス排除とエンドポイントの設定に気をつけないとトンデモ研究になりそうだ。あと Setting も multicenter で、、、などなど費用対効果が悪そうなことを考えている。