検査キットがインフルエンザを診断する?いいえ、医師が診断します(厚生労働省ホームページより)

⌘ 背景・疑問

インフルエンザの季節になると、患者さんは必ずと言っていいほど、「インフルエンザの検査をして欲しい」と言います。

なかには「検査してもらえなかったのに薬だけだされた」と、オセルタミビル(タミフル®︎)とアセトアミノフェン(カロナール®︎)が処方され『???』となっている方がいます。

インフルエンザの診断に検査キットは必須なのでしょうか?

 

 

⌘ 結論

本ブログのタイトルの通りです。診断は医師が行います。決して検査キットが決めるのではありません。

 

 

⌘ 根拠

理由は大きく分けて2つありますが今回は、そのうちの1つをご紹介します。

 

▶️厚生労働省のホームページ「政策について」の項にインフルエンザの記載があります。

これによると、医師及び獣医師はインフルエンザ患者と診断した場合、『法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない』とされています。

そして届出の基準として以下の記載があります。

 

▶️症状や所見からインフルエンザが疑われ、かつ、表.1のすべてを満たすか、表.1のすべてを満たさなくても表.2を満たすことにより、インフルエンザ患者と診断。

 

表.1:届出のために必要な臨床症状(4つすべてを満たすもの)

突然の発熱
高熱
上気道炎症状
全身倦怠感等の全身症状

 

表.2:届出のために必要な検査所見

検査方法: 迅速診断キットによる病原体の抗原の検出
検査材料:  鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液

 

▶️つまり、検査キットは必須ではありません。また上記の4徴候が認められなくとも今後、症状が悪化しインフルエンザの兆候を示しそうな場合、医師はインフルエンザと診断します。

 

▶️いかがでしょうか。少なくとも検査キットが必須でないことは国が示しています。ただ私個人としては「〇〇が言っているから、そのようにしましょう」というのは、あまり好きではありません。もう一つの理由については、今後ブログで紹介していきます。

 

-Evidence never tells you what to do-




 

情報リテラシーとは?(アメリカ図書館協会; 1989)

情報リテラシーの定義は、1989年にアメリカ図書館協会が発表した最終報告書に記載されています。以下原文を一部翻訳。

情報リテラシーとは?

個人が「情報を必要とするときに、必要な情報を効果的に探し出し、評価し、使用する能力」を身につけるための能力のセットである。

 

▶️情報リテラシーは、急速な技術変化と情報資源の爆発的発展を遂げている現代において、益々重要になっている。この環境がさらに複雑化するにつれて、個人は、学術研究、職場、個人生活において、多様で豊富な情報の選択に直面している。

 

▶️情報は図書館、地域社会のリソース、特別利益団体、メディア、インターネットを通じて入手可能であり、情報はフィルタリングされていない形式で個人に提供されているため、真正性、妥当性、信頼性について疑問を投げかけられている。さらに情報は、グラフィカル、聴覚、およびテキストを含む複数の媒体を通じて入手可能であり、個人がそれを評価し、理解する際に新たな課題をもたらす。

 

情報リテラシーを学ぶとどうなる?

▶️不確実な品質と情報量の増大は、社会にとって大きな課題となっている。情報を効果的に使用するために必要な補完的な能力がなければ、つまり膨大な量の情報の入手だけでは、より情報に価値を見出す市民は生まれにくい。 情報リテラシーは、生涯学習の基礎を形成する。すべての分野、すべての学習環境、あらゆるレベルの教育に共通している。学習者はコンテンツをマスターし、調査を拡張し、より自主的になり、自分の学習をより強力に制御することができる。情報リテラシーを身につけた個人は以下6つのことが可能である:

①必要な情報の程度を決定する

②必要な情報に効果的かつ効率的にアクセスする

③情報とそのソースを批判的に評価する

④選択した情報をナレッジベースに組み込む

⑤情報を効果的に使用して特定の目的を達成する

⑥情報の使用を取り巻く経済的、法的、社会的問題を理解し、倫理的かつ合法的に情報にアクセスし使用する

 


原文(英語)

以下、原文の一部

Information Literacy Defined

Information literacy is a set of abilities requiring individuals to “recognize when information is needed and have the ability to locate, evaluate, and use effectively the needed information.” 1 Information literacy also is increasingly important in the contemporary environment of rapid technological change and proliferating information resources. Because of the escalating complexity of this environment, individuals are faced with diverse, abundant information choices–in their academic studies, in the workplace, and in their personal lives. Information is available through libraries, community resources, special interest organizations, media, and the Internet–and increasingly, information comes to individuals in unfiltered formats, raising questions about its authenticity, validity, and reliability. In addition, information is available through multiple media, including graphical, aural, and textual, and these pose new challenges for individuals in evaluating and understanding it. The uncertain quality and expanding quantity of information pose large challenges for society. The sheer abundance of information will not in itself create a more informed citizenry without a complementary cluster of abilities necessary to use information effectively.

Information literacy forms the basis for lifelong learning. It is common to all disciplines, to all learning environments, and to all levels of education. It enables learners to master content and extend their investigations, become more self-directed, and assume greater control over their own learning. An information literate individual is able to:

  • Determine the extent of information needed
  • Access the needed information effectively and efficiently
  • Evaluate information and its sources critically
  • Incorporate selected information into one’s knowledge base
  • Use information effectively to accomplish a specific purpose
  • Understand the economic, legal, and social issues surrounding the use of information, and access and use information ethically and legally

参考文献

1) http://www.ala.org/acrl/publications/whitepapers/presidential   — Last access date is 20171201.



ピロリ菌検査の感度と特異度はどのくらいですか?(日本ヘリコバクター学会ガイドライン2015)

以前の記事の続きです。

ピロリ菌感染診断法における各検査の感度・特異度を以下の表にまとめました。

やはり尿素呼気検査の感度と特異度は高いですね。

表1. ピロリ菌感染診断法の感度・特異度

 診断法  感度(%)  特異度(%)
 迅速ウレアーゼ試験

除菌前 1)

除菌後 2)

 

85~95

61~100

 

95~100

91~100

 鏡検法

除菌前

     HE 染色 3,4)

      ギムザ染色 3)

 

 

92~99

88

 

 

89~100

98

 培養法 5)  68 ~ 98  100
 尿素呼気試験 6-9) 95~98  95~97
 抗体測定法

除菌前

     血清抗体 10,11)

     尿中抗体 10,11)

 

 

88~100

85~96

 

 

50~100

79~90

 便中抗原測定法

        除菌前 12)

   除菌後 13-15)

 

96~100

75~90

 

97~100

96~100

(日本ヘリコバクター学会ガイドライン2015から引用)

⌘ 参考文献

  1. Ricci C et al.Diagnosis of Helicobacter pylori: invasive and non-invasive tests. Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2007; 21(2): 299-313. [PMID:17382278]
  2. Vaira D et al.How useful is the rapid urease test for evaluating the success of Helicobacter pylori eradication therapy? Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol. 2007 Nov; 4(11): 600-1. [PMID: 17925801]
  3. Laine L et al. Prospective comparison of H&E, Giemsa, and Genta stains for the diagnosis of Helicobacter pylori. Gastrointest Endosc. 1997 Jun; 45(6): 463-7. [PMID: 9199901]
  4. MacOni G et al. Is routine histological evaluation an accurate test for Helicobacter pylori infection? Aliment Pharmacol Ther. 1999 Mar; 13(3): 327-31. [PMID:10102966]
  5. Cutler AF. Diagnostic tests for Helicobacter pylori infection. Gastroenterologist. 1997 Sep; 5(3): 202-12. [PMID: 9298375]
  6. Gisbert JP et al. Review article: 13C-urea breath test in the diagnosis of Helicobacter pylori infection — a critical review. Aliment Pharmacol Ther. 2004 Nov 15; 20(10): 1001-17. [PMID: 15569102]
  7. Kato M et al.Clinical studies of 13C-urea breath test in Japan.  J Gastroenterol. 1998; 33 Suppl 10: 36-9. [PMID:9840015]
  8. Ohara S et al. Studies of 13C-urea breath test for diagnosis of Helicobacter pylori infection in Japan. J Gastroenterol. 1998 Feb; 33(1): 6-13. [PMID: 9497214]
  9. Ohara S et al. The UBiT-100 13CO2 infrared analyzer: comparison between infrared spectrometric analysis and mass spectrometric analysis. Helicobacter. 1998 Mar; 3(1): 49-53. [PMID: 9546118]
  10. Kato M et al. Clinical usefulness of urine-based enzyme-linked immunosorbent assay for detection of antibody to Helicobacter pylori: a collaborative study in nine medical institutions in Japan. Helicobacter 2000; 5: 109-119. [PMID: 10849061]
  11. Murakami K et al. An evaluation of the performance of a novel stick-type kit for rapid detection of Helicobacter pylori antibodies in urine. Clin Lab 2011; 57: 481-487. [PMID: 21888011]
  12. Sato M et al. Characterization and usefulness of stool antigen tests using a monoclonal antibody to Helicobacter pylori catalase. J Gastroenterol Hepatol 2012; 27 Suppl 3: 23-28. [PMID: 22486867]
  13. Chey WD. Proton pump inhibitors and the urea breath test: how long is long enough? Am J Gastroenterol 1997; 92: 720-721. [PMID:9128344]
  14. Shimoyama T et al. Applicability of a rapid stool 17 antigen test, using monoclonal antibody to catalase, for the management of Helicobacter pylori infection. J Gastroenterol 2011; 46: 487-491. [PMID: 21264478]
  15. Shimoyama T et al. Comparison of monoclonal antibody-based stool antigen tests to determine the results of Helicobacter pylori eradication therapy. Scand J Gastroenterol 2010; 45: 1431-1434. [PMID: 20695725]

 




 

ピロリ菌の検査方法にはどんなものがありますか?

ピロリ菌の検査方法には、内視鏡(昔でいうところの胃カメラ。厳密にいうと違う)を使用するものと、使用しないものがある。

 

⌘ 内視鏡を使用した検査方法(侵襲的)
①迅速ウレアーゼ試験
②鏡検法
③培養法

⌘ 内視鏡を使用しない検査方法(非侵襲的)
④抗体測定
⑤尿素呼気試験
⑥便中抗原測定

 

▶️個人的には④と⑤の使用頻度が高いと感じている。患者さんの負担が軽いからかな?と思ったら、尿素呼気検査については感度と特異度が共に 95% 以上あるようなので、これが根拠であると考えられる(→ピロリ菌検査の感度と特異度はどのくらいですか?)。保険の同時算定も可能なようです。

 

▶️各検査の大まかな費用は下記サイトが分かりやすいかも。筆者は薬局勤務なので詳細はわからない。

 

リンク先→ 血液検査でピロリ菌の有無を判定!

検査


▶️ちなみにですが胃カメラと内視鏡は別物です。

▶️内視鏡は、正確には「上部消化器内視鏡検査」と呼ばれ、経口あるいは経鼻で使用されます。現在では、ほぼ全てが内視鏡であると考えられます。なぜなら胃カメラはリアルタイム画像の取得が出来ないからです。

▶️検査中に自身の胃壁を見たことがある人は、間違いなく内視鏡検査です。ただ、胃カメラの方が伝わりやすく、呼びやすいため現在でも内視鏡のことを “胃カメラ” と呼称していると考えられます。気になる方は Wikipediaを参照。

 




 

ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009-2016)

⌘ 背景

Helicobacter pyloriH. pylori)感染の診断と治療のガイドラインに以下の記載がある。またネット上では偽陰性を生じる薬剤として下記の薬剤が掲載されていた。情報が確からしいものか検証したい。

⌘ 目的

原著論文にあたることで「検査前後の薬剤投与中止 2 週間の根拠」を明らかにする

⌘ 方法

Pubmed での論文検索

“ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?(H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009-2016)” の続きを読む

クオリア qualia とは?

クオリア qualia:
個々人が主観的に体験する”質(感じ)”のこと

 

以下、デジタル大辞泉より引用

クオリア(qualia)とは?

▶️感覚的・主観的な経験にもとづく独特の質感。「秋空の青くすがすがしい感じ」「フルート音色のような高く澄んだ感じ」など。感覚質

 

私のクオリアについての捉え方

▶️『科学でいうところの物質は同一であっても、感じ方は十人十色』というのが個人的な解釈。

 

▶️ポリファーマシー polypharmacy や Potentially Inappropriate Medications (PIMs) も、ある人にとっては問題であるが、ある人にとっては何の問題もない。

 

▶️例えば高血圧ガイドライン2014 でいうところの高血圧患者について、ある患者に対しては介入が必要と考える医療者もいれば、逆に不必要と考える者もいる。

 

▶️この差異は血圧という検査値だけでなく、個々の患者の予後を考えているか否かであろう。

 

▶️Qualia はときに言葉よりも大切なものであるが、コトバとは切り離せない。

 

▶️各々の “感じ方” を形にするために、他者へ伝えるための手段としてはコトバが必要であるからだ。

 

 

-Life is what you publish it-

EBMの父 David Lawrence Sackett とは?(JAMA 1992; Charge)

“臨床疫学” という分野を初めて確立した医師。

(画像元:Fred Lum/The Globe and Mail)

 

▶️著書に Clinical Epidemiology や Evidence-based medicine (以下、EBM) がある。

 

▶️EBM を実践したい、そのために理解したいと想う方は原著論文1) を読んでみてはいかがだろうか?

 

▶️偉大なる父の考えに触れ、何か得ることができるかもしれないし、何も得られないかもしれない。

 

▶️Dr. Sackett は2015年5月13日 (享年80) に御逝去されました。

奇しくも筆者の誕生日と同じです。

勝手に EBMとの運命を感じています。

 

参考文献

1) Evidence-Based Medicine Working Group. Evidence-Based Medicine. A new approach to teaching the practice of medicine. JAMA. 1992 ; 268 (17) : 2420-5. [PMID : 1404801]

 

 

-Evidence never tells you what to do-