新薬シベクトロ®️によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌への効果はどのくらいですか?(vs. ザイボックス®️;J Infect Chemother. 2018.)

Efficacy, safety and pharmacokinetics of tedizolid versus linezolid in patients with skin and soft tissue infections in Japan – Results of a randomised, multicentre phase 3 study.

Randomized controlled trial

Mikamo H, et al.
J Infect Chemother. 2018.

PMID: 29530544

目的

テジゾリド200mg(1日1回・7日間治療)とリネゾリド600mg(1日2回・7〜14日間治療)の有効性と安全性を比較するために、オープンラベル・ランダム化(2:1の比率)第3相試験を実施した。

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抗菌薬は急性呼吸器感染症の重症化を防げますか?(Ann Fam Med. 2013)

Risks and benefits associated with antibiotic use for acute respiratory infections: a cohort study.

Meropol SB, et al.
Ann Fam Med. 2013 Mar-Apr.

PMID: 23508604

目的

急性非特異的呼吸器感染症(ARI)のために抗生物質が頻繁に処方される。これは深刻ではあるが稀な細菌性疾患への進行リスクを避けることが望ましいと考えられるためである。しかし、関連する有害な薬物事象の低リスクであっても、そのような事象が人口レベルで多く発生する可能性がある。本研究の目的は、抗生物質を処方された患者と抗生物質を受けていない患者とを比較し、ARI患者集団における抗生物質使用のリスクおよび利益を評価することであった。

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急性呼吸器感染症患者の満足度を下げずに抗菌薬使用を減らせますか?(CDSR 2015)

Interventions to facilitate shared decision making to address antibiotic use for acute respiratory infections in primary care.

Coxeter P, et al.

Cochrane Database Syst Rev. 2015.

PMID: 26560888

背景

意思決定の共有は、患者中心のケアの重要な要素です。これは、コミュニケーションとエビデンスベースの練習スキルであり、患者の期待を引き出し、誤解を明確にし、治療の便益と害に対する最良の証拠を議論します。急性呼吸器感染症(ARI)は、プライマリケアのコンサルティングや抗生物質の処方を受ける最も一般的な理由の1つです。しかし、抗生物質はARIにはほとんど効果がなく、その過剰使用は抗生物質耐性につながります – 進化する公衆衛生危機。共有の意思決定における利益と害のトレードオフのより明確な考察は、プライマリケアにおけるARIの抗生物質処方を減少させる可能性がある。

目的

共有意思決定を促進することを目的とする介入が、プライマリケアにおけるARIの抗生物質処方を増減するかどうかを評価する。

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抗菌薬を正しく使うには?(世界抗菌薬啓発週間2018.11.12〜11.18)

風邪やインフルエンザに抗菌薬は効かない

誤った認識を正し、適正な行動へとつなげよう

2018年11月11日のNHKニュースに抗菌薬に対するアンケート調査結果が取り上げられていました。掲載期間が1週間とのことですので、ここに概要を取り上げておきます。

以下、抜粋。

国立国際医療研究センター病院は、インターネットを利用して全国の10代〜60代までの一般の男女721人に対して、抗菌薬に対するアンケート調査を行った。

「抗菌薬がどのような病気に有用か」という質問に対して、「かぜ」と答えた人が49.9%、「インフルエンザ」と答えた人は49.2%と、ほぼ半数の人が誤って認識していることが分かった。

また「かぜで受診した時に処方してほしい薬」として、30.1%の人が「抗菌薬」と答えた。

 

風邪の大半、インフルエンザの原因はウイルスです。そもそも細菌や真菌、ウイルスの違いはどこにあるのでしょうか。

大幸薬品のホームページにわかりやすい記載がありましたので、是非そちらをご覧ください。

↓クリックでURL先に飛びます。

病原体:ウイルスと細菌と真菌(カビ)の違い

つまりウイルスには抗ウイルス薬、細菌には抗菌薬、真菌(カビ)には抗真菌薬が効くということです。

何でもかんでも抗菌薬を使用するということは、テニスラケットをもって野球のバッターボックスに立つようなものです(他に上手い例えがありましたら教えてください)。

 

抗菌薬の誤った使い方がもたらす未来とは

それは耐性菌(AntiMicrobial Resistance: AMR)による人類の破滅です。AMR Reviewによると、耐性菌による年間の死亡者数は2013年では70万人、2050年には1,000万人にものぼるようです。

 

 

そして、2050年に推定されるAMRによる年間の死亡者数1,000万人のうち、約47%を占める4,730,000人はアジア圏の人間であることが推測されています。

World Antibiotic Awareness Week

上述の問題点を解消するためには、私たち一人一人が誤った認識を改め、抗菌薬を適正に使用する必要があります。これは日本に限った話ではなく、世界中で起こっている非常に大きな問題です。世界保健機構(World Health Organization: WHO)も本問題について警鐘を鳴らしています。WHOのホームページにWorld Antibiotic Awareness Weekについて掲載されていますので、興味がある方は是非ご参照ください。

※以下は、World Antibiotic Awareness Weekの各テーマです。

12 Nov 2018, Day 1 –Awareness and Behaviour Change

13 Nov 2018, Day 2 –Global Surveillance and Research

14 Nov 2018, Day 3 –Infection Prevention Control, WASH and the Environment

15 Nov 2018, Day 4 –Optimising use of antimicrobials in human and animal health

16 Nov 2018, Day 5 –Investment and R&D in AMR

 

意識と行動の関係性

マザーテレサの残した言葉に以下のようなものがあります。

“思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。

言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。

行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。

習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。

性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。”

 

前提を疑おうとすることで、無意識を意識化することができ、明日への行動へと繋がっていきます。今まで当たり前だと信じて行ってきたことが、実は誤っていたことは往々にしてあるものです。

抗菌薬は決して万能薬ではなく、必要な患者に、ここぞというときに使うリーサル・ウェポン的な存在であることを、医療従事者が改めて意識してみるのはいかがでしょうか。そして患者側も不必要に抗菌薬を欲しがらない、抗菌薬に頼らないようにし、治療方針の相談と適切な治療を要望する姿勢を目指してみるのはいかがでしょうか。

 

人類の未来は、我々一人一人の意識と行動変容にかかっています。

【AMR対策】経口フルオロキノロン系抗菌薬は大動脈解離のリスク因子となりますか?(JACC 2018)

Oral Fluoroquinolone and the Risk of Aortic Dissection

Lee CC et al.

Journal of the American College of Cardiology 

PMID: 未

背景

以前の研究では、フルオロキノロン治療と重篤なコラーゲン障害、大動脈瘤(aortic aneurysm; AA)および大動脈解離(aortic dissection; AD)との関連について、安全性の懸念が提起されていた。

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【AMR対策】安易に抗生剤を使うと救急外来の受診率が上がる?(Clin Infect Dis. 2008)

Emergency department visits for antibiotic-associated adverse events.

Shehab N et al.

Clin Infect Dis. 2008 Sep 15;47(6):735-43. doi: 10.1086/591126.

PMID: 18694344

試験の背景

薬物関連の有害事象は、抗生物質使用の過小評価の結果であり、これらの事象において全国規模まで範囲はを広げた研究はされていない。本試験の目的は、米国における抗生物質に関連する薬物関連有害事象により救急外来(emergency department, ED)を訪問した件数および割合を、薬物クラス、個々の薬物および引き起こされた事象タイプによって比較および推定することであった。

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抗生物質で風邪の重症化は防げますか?(Ann Fam Med. 2013:AMR対策シリーズ)

Risks and benefits associated with antibiotic use for acute respiratory infections: a cohort study.

Meropol SB et al.

Ann Fam Med. 2013 Mar-Apr;11(2):165-72.

PMID: 23508604

背景・疑問

20155月の世界保健総会で、薬剤耐性(AntiMicrobial Resistance: AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択され、加盟各国は2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定することを求められた。

これを受け 201645日、厚生労働省において「 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 」のもとに、「 薬剤耐性に関する検討調整会議 」を設置、我が国として初めてのアクションプランが決定された。厚生労働相のホームページ薬剤耐性(AMR)対策について

今更ながら抗生物質の使用を減らした時のリスク・ベネフィットはどのくらいか?という疑問について文献を読んでみる。

結論

急性呼吸器感染症に対する抗生物質の効果は限定的。ルーティンで使用するほどの益は認めらなかった。

抗生物質使用による重篤な副作用は、抗生物質を使用しない群と比べ差が認めらなかった。一方、感染症の重症化(市中肺炎)による入院については、抗生物質使用により 10万人当たり9(8.19)件減らすにとどまった。

これは有益な治療必要数(Number-Needed to Treat for Benefit: NNTB)に換算すると 12,255であった。


組入基準:

国際疾病分類コードと同様のシステムにより、急性非特異的呼吸器感染(ARIs)と診断された 18歳以上を組入れた。

除外基準:

地域性肺炎、慢性気管支炎の急性増悪等、抗生物質の使用を診療ガイドラインで推奨されている疾患。結核や真菌感染症や寄生虫感染に使用される薬剤は除外。


抄録

目的:おそらく小さなリスクであるが重大な細菌感染症への進行を避けるために、急性非特異的呼吸器感染(ARIs)に対し抗生物質は頻繁に処方される。しかし、薬剤に関連する有害事象の低リスクでさえ、人口集団レベルでは多くの有害事象をもたらす。本研究の目的は、ARIs患者のコホートにおける抗生物質使用のリスクと有益性を、未治療の患者群と比較する事である。

方法:ARIsについては英国のプライマリケアデータベースからアクセスし、1986年6月から2006年8月までの成人患者コホートを使用した。
暴露は抗生物質処方であった。主要アウトカムは、次項による15日以内の入院。
(1)重篤な副作用(過敏症、下痢、発作、不整脈、肝または腎不全)

(2)地域性肺炎。

結果:コホートには、ARIs診断を受けた 1531,019回のアクセスが含まれていた。抗生物質は 65%の症例で投与された。100,000人当たりの調整リスク差は、未治療の患者と比較して、有害事象が 1.07(95%CI: -4.52〜2.38; P =0.54)、肺炎による入院は 8.16(95%CI: -13.24〜-3.08; P =0.002)。 肺炎による入院患者 1人を防ぐために必要とする治療数は 12,255人であった。

結論:抗生物質で治療されていない ARIs患者と比較して、抗生物質で治療された患者では、重篤な有害事象は差が認められず、肺炎の入院リスクを軽度に減少した。一般的な外来診断のための抗生物質処方による小さな利益は永続的な緊張を作り出す。社会レベルでは、医師は抗生物質を処方するにあたり、将来の抵抗を最小限にする一方で、遭遇時には、その患者の益-害のバランスを最適化するように強制されまる。


PICOT

  • 急性非特異的呼吸器感染症と診断された成人(1,531,019人)
  •  I  抗生物質の処方
  •  処方なし
  •  次項による処方 15日後の入院
  •  ①重篤な薬物有害事象(過敏症、下痢、痙攣発作、不整脈、肝障害、腎障害)
  •     ②市中肺炎
  •  害、後向きコホート研究、イギリスThe Health Improvement Network(THIN by CSD Medical Research)データベース 1986年6月〜2006年8月のデータを使用

批判的吟味

 追跡期間は?

➡抗生物質投与 15および 30日後

脱落はどのくらいか?

7%程度。結果に影響を及ぼすほどではなさそう。

マスキングされているか?

記載無し。一般的なデータベースを使用していることと、後ろ向きに検討していることから、入院決定における恣意性は低いと考えられる。

交絡因子の調整は?

傾向スコアを使用。既知の交絡因子については調整。

コメント

風邪に抗生物質は必要なさそうですね。しかし重篤な副作用は抗生物質未使用群と大差ないため、高齢者等、細菌性二次感染が起こりやすいグループにおいては使用を考慮しても良いかもしれない。もちろん薬剤クラスや用量の設計は必要。

また後ろ向きの観察研究であるため相関関係が示されただけにすぎず、さらに未知の交絡因子の影響があることも念頭に置かなければならない。しかし、それでも NNTB=12,255という値はインパクトがある。

抗生物質が必要な患者に、必要な用量、必要な期間処方するということを、改めて意識せざる負えないのではないでしょうか。

 

-Evidence never tells you what to do-