【雑記】公平と公正と、ときどき平等

言葉って難しい

日々感じているのですが,言葉って本当に難しい.

言葉にできない感情や自身の知識不足により言語化できていないことを解消しようとするだけでも四苦八苦するのだが,さらに始末が悪いことに「言葉を発した側の意図」とは真逆の意味で相手に受け取られる場合も多々ある.

さて,公平,平等,公正,これらの言葉をどのように使い分けていますか?正直わたしはできていません.

気になったため調べてみました.

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【読書レビュー】新世界 著:西野亮廣

新世界とはオンラインサロンなのか?

本書の特徴

本書の一番の特徴は『問いかけるような語り』だと思います.著者の今までの作品には無かったように思います.

この語りの所為なのか,場面ごとの情景が想像しやすかったです.特に まえがきと1章については,読んでいて少し目頭と胸が熱くなりました.西野さんの背景の一部を知ることが出来ると思います.

本書に記載されていますが,こういった情景,想いを受け取れるような演出は,女性の意見を取り入れた結果なのかもしれません.とにかく夢中で読んでしまいました.

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【雑記】医療倫理の定義について考えてみた

「医療倫理」とは何か。改めて考えさせられる機会を得た。

日々、業務に勤しむ中で、おそらく身体に染み付いているが、すぐに言語化できないテーマだ。

ヒポクラテスやインフォームド・コンセント、尊厳死と、非常に幅広い本テーマについて、この機会に再度、自身の中の言葉の定義を見つめ直してみた。

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【寄稿のお知らせ】AHEADMAP会報誌・臨床批判Vol.2 No.1

AHEADMAP会報誌・臨床批判Vol.2 No.1

今回は雑記です。

Evidence-Based Medicine(EBM)という行動様式における、メタ認知の重要性について寄稿いたしました!!

以下の画像をクリックすると 、

AHEADMAPホームページ

に飛びます ↓↓

そもそもメタ認知とは?

以下、デジタル大辞泉より引用:

《metaは、より高次の、の意》認知心理学の用語。自分の行動・考え方・性格などを別の立場から見て認識する活動をいう。

・自身を俯瞰することの重要性について高血圧症を例に論考しました。

臨床批判Vol.2 No.1

・これまでに寄稿した論考についてはこちらからどうぞ ↓↓

臨床批判アーカイブ

 

思い返すと2016年11月に参加した神奈川EBM実践研究会で初めてメタ認知という言葉を知りました。そして当時の名郷先生のご講演に呑み込まれました。こんなにも力と熱を持った講演は聞いたことがありませんでした(所々にユーモアを散りばめていました)。

これを機に哲学や論文の批判的吟味に興味を持つようになりました。

実臨床における治療効果はどのくらいなのか、企業パンフレットや添付文書からでは得られない情報が論文には詰まっていました。

英語については齧った程度のレベルだったため、論文を読み始めた当初は確かに大変でした。

全てに言えることかもしれませんが、物事の初動はエナジーが必要なものです。

それを乗り越えてでも論文には読む価値と確かな魅力がありました。

その上でエビデンスだけでなく、様々な情報や患者の意向を合わせshared decision making を続けていくことの重要性にも気がつくことができました。

自己目的的に俯瞰すること、これは正にメタ認知そのものです。所詮ヒトの経験は一般化することはできません。これはエビデンスも同様です。しかし個人の意思が介在しない情報の曖昧な確からしさがエビデンスにはあります。

だからこそ治療することも治療しないことも後押しできるのかもしれません。治療する前提であるということは、治療したい “ワタシ” がいるに他なりません。一歩立ち止まり、なぜ治療したいのか、その治療が本当に必要なのか、必要とする根拠は何なのか、改めて自己に問いかけたほうが良いのかもしれません。

まだほんの数年ですが、EBM的行動様式を実践することで見えてきた景色があります。この景色は恐らく来年には見えなくなっていると思います。それほど医療の進歩は早く論文の数が多いのです。

今現在、最も良いであろうと考えられる選択をするために手持ちのカードを増やしていく、そして捨てていく、新しいカードと取り替えていく、このような行動が過去を見直し、今日の実践、そして明日の行動へと繋がっていくのではないでしょうか。

かかりつけ薬剤師というコトバ

はじめに

はじめに断っておくと、2016年4月1日からはじまった制度の説明ではありません。

私の内の言葉の定義を記します。

と、言いつつ制度内容にも触れます。

私の考える “かかりつけ薬剤師”

ある先生のコトバにかなり影響を受けている私、その私が考えている “かかりつけ薬剤師” とは、

『患者さんが困ったときに顔が浮かぶ薬剤師』

『なんでも相談しやすい薬剤師』

『処方箋がなくても話をしたい薬剤師』

です。

寄り添うという言葉の持つ意味

上記のような文字を羅列すると、患者に寄り添いすぎでは?という意見も出そうなものです。

私が言いたいのは『まず寄り添ったっていいじゃないか』という事です。

 

個々人が正しいと信じる医療行為あるいは介入は個々人の考えで、各々のアタマの中にあることです。

これは治療を受ける患者とは、そもそも切り離されていると考えた方が自身の考えを俯瞰するのに適していると私は考えます。

 

その上で長期的な薬の服薬サポートはもちろん、不定愁訴があれば処方提案もしますし、飲めない薬の管理もする。

まず寄り添わずして不定愁訴を聞くことができるのでしょうか?

寄り添いながらも俯瞰する。一旦は受け止め、その後に向き合ったって遅くはないのでは?と私は言いたい。

 

これは患者さんの困っている事に対してのソリューション、コンプライアンスやアドヒアランスの向上が、医療あるいは医療行為を行う上で良いであろうと考えているアタマの中の私が先行しているからに他なりません。

かかりつけ薬剤師制度

2016年4月から新たな制度として “かかりつけ薬剤師” が明文化されました。

 

最初は、この制度自体に疑問を抱いていました。

なぜ明文化されたのか?

なぜ今まで行ってきたことが調剤報酬として評価されるのか?

薬剤師は仕事をしてこなかったではないかという意見の根拠は何か?

薬局数を半分(あるいはそれ以下)にするという構造は何か?

 

そして、こうも考えるようになりました。

『この疑問は解消するのではなく、常に自分に問いかけながら仕事しよう』と。

 

2年に1度の診療報酬改定と調剤報酬改定、次回は2018年度、介護報酬改定との同時改定です。かかりつけ薬剤師に求められることがさらに増えるのかはわかりません。

本当は現場から声を発していき、それが制度として盛り込まれる形にしたいものです。

診療報酬制度が保つ力とワタシ

制度がどう変わろうとも薬剤師としてやるべきことは変わらないのでは?という意見も時々見かけますが、ヒトはそんなに強くないよと言いたい。

ちょっとしたコトバに同調することもあれば、自身の考えを疑うこともある。つまり制度改定という変化に影響を受ける生き物なのです。

 

制度というルールの中で薬剤師一人一人が日々変わっていないのであれば、それは怠慢であり退化です。

現状維持はヒトが日々変わっているから出来るのであって、以前の私と今の私、未来の私の間に同一性はないのです。

 

自身のアタマの中の薬剤師像を追いかけながらも常に俯瞰し、正しいと信じる医療を実践するためにエビデンスを探し、目の前の患者に対し最適であろうと信じる医療は何かと自問自答していくのが、私の考える『かかりつけ薬剤師』です。

 

そして、この考えはEBMという行動指針によって実現可能ではないかな?と考えています。

ポリファーマシーは必要悪?(BMJ 2013:Free)

f:id:noir-van13:20170306232810p:plain

BMJ. 2013 Nov 28;347:f7033. doi: 10.1136/bmj.f7033.
Wise J

PMID:24286985

私的背景

ポリファーマシーというコトバが一人歩きしているのは言うまでもない。個人的には “5剤以上使用している” ただの状態と捉えている。

2013年に BMJへ掲載された『Polypharmacy: a necessary evil』という何ともキャッチーな論文に出逢ったので読んでみた。

ポリファーマシーは必要悪?

以下、本文

ポリファーマシーというコトバが最初に医学文献に登場したのは 150年以上前である。この問題には緊急に対応する必要があると King’s Fund※のレポートにて報告されている(King’s Fund. Polypharmacy and medicines optimization: making it safe and sound. 2013. https://www.kingsfund.org.uk/)。
 

イングランドにおける 1人あたりの平均処方薬剤数は、2001年の 11.9から 2011年の 18.3と、過去 10年間で実に 53.8%増加した(Health and Social Care Information Centre. Prescriptions dispensed in the community, statistics for England, 2001-2011. 2012. http://content.digital.nhs.uk/catalogue/PUB06941)。

 

またスコットランドの 300,000人以上の患者を対象とした調査では、1995年から 2010年の間に 5種以上の薬剤を服用する患者の割合が 12%から 22%に増加し、10種以上では 1.9%から 5.8%に上昇した(see below Figure)
高齢者の場合、この数値はさらに高く、65歳以上の患者 6人に 1人が 10以上の薬剤を飲んでいるThe rising tide of polypharmacy and drug-drug interactions: population database analysis 1995-2010. – PubMed – NCBI

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Proportion of patients in Scotland receiving more than one drug, 1995 and 2010.

(Figure:本文より引用)

 

ポリファーマシーの増加は、高齢化とフレイル人口の増加によって益々推進されており、その多くは複数の長期的状態を有している。加えて、脳卒中や急性心筋梗塞などの重大なイベントリスクを軽減するために、複雑な予防レジメンが処方されている。

「ポリファーマシーは必要悪、つまり必要不可欠である」と Martin Duerdenは言った。彼は一般開業医であり、かつ King’s Fundレポート「Polypharmacy and Medicines Optimisation: Making It Safe and Sound」の共著者でもある。彼は「これ、つまりポリファーマシーにはいつも悩まされていましたが、今ではポリファーマシーが現代医学の一部でなければならないと承知しています。しかし我々は多剤併用療法を実施する上で、最も効果的かつ害の少ない薬剤使用を確実にするための努力が必要です」と述べている。

 

King’s Fund レポートによると個々の患者におけるポリファーマシーとは、複数の薬剤を同時に使用することと定義しており、それは適切にも問題(不適切)にもなり得る。

最良のエビデンスに従って処方され、最適化された薬剤が使用された時、それは適切なポリファーマシーであり、平均余命を延ばすだけでなく患者の QOLをも向上できる。
しかし不適切なポリファーマシーは、患者のコンプライアンスや QOLに影響を及ぼすだけでなく、相互作用や有害な薬物反応リスクを増加させる可能性がある。King’s Fund レポートには、医師、看護師、薬剤師のための多併存疾患とポリファーマシーの管理に関するより良い訓練が求められている。一般的な訓練コンサルタントは、複数の条件を有す患者が薬物治療をレビューするために充分な時間を割けるよう長くすべきであると述べている。個々の薬剤が他の薬剤との関連において、それぞれの薬剤が適切にまたは不適切に処方されているかどうかを考慮する必要がある。

ポリファーマシーという言葉に対する正式検討の必要性
10年前に 4つあるいはそれ以上の薬剤使用を閾値とし、この状態は高頻度に検討されてきたが
、現在この状態は一般的である。しかし処方薬剤の数が増えるにつれて、処方ミス、高リスク処方、薬物有害事象の危険性が増しているという明確なエビデンスが今や明らかとなっている。
一般的な訓練(診療により不適切なポリファーマシー是正)としては、10種類以上の薬剤を定期的に服用している患者と、4種以上の薬剤を服用している患者に対し薬物相互作用の可能性など、別のリスク要因がある患者の処方を見直すことを、実用的なより良いアプローチとしてあげている。慢性疾患の有病率は増加しており、多くの患者はいくつかの症状を自覚している。

 

各々の患者が各国のガイドラインに従って治療される場合、複雑な薬剤カクテルを処方されることになる。 Keele 大学にて一般診療と疫学の上級講師を務める Umesh Kadamは次のようにコメントしている。「ポリファーマシーは、高齢者だけでなく慢性疾患患者にとっても問題である。慢性疾患ガイドラインは複数の薬物を推奨しているため、患者はかなりの薬物を処方されるが、これと同時に患者はとても混乱させられる可能性がある」。

 

「現在のケアモデルにおいて、我々は複数の薬剤処方に体系的なアプローチをとっていません。したがって多併存疾患を有す患者において、ポリファーマシーは益々重要な問題となっています。」と彼は付け加えている。また、King’s Fund レポートでは多併存疾患とポリファーマシー(問題)を有している患者が参加する臨床試験のさらなる実施を要求している。

 

Martin Duerdenは BMJに次のように語っている。「多併存疾患は 65歳を超える患者にとっては一般的なことです。しかし我々の研究(臨床試験)のほとんどは単一の疾患に基づいており、複雑な病的状態の患者を排除する傾向があります。我々のエビデンスは非常に珍しい患者に基づいています。」

 

他の推奨事項としては、糖尿病、冠動脈性心疾患、心不全および慢性閉塞性肺疾患のような、一般的に共存する長期的なコンディションを考慮したエビデンスに基づくガイドラインの開発である。さらに、一般開業医 general practitioners(GPs)の成績目標を定めた品質と成果の枠組みは、単一疾病の治療改善ではなく、いくつかの長期的な(疾病)状態を有す患者のニーズに重点を置くよう見直されるべきである。


リバプールのエイントリーにある大学病院の Ageing and Chronic disease 研究所の
John Wilding教授は BMJに次のように語っている。「ポリファーマシーは(疾患)全てに対する(治療)目標と、全て(の疾患)に対するガイドラインの意図しない結果です。例えば、患者が 15種類の薬剤を使用していることをあなたが知る前に、すでに彼らは糖尿病登録簿、冠動脈性心臓病登録簿、そして慢性閉塞性肺疾患登録簿に登録されている可能性があります。」

患者の負担を最小限に抑えるには?
King’s Fund レポートは、増分処方または “処方カスケード” に対して警告している。これは臨床医が処方した 1つの薬剤によって症状が引き起こされたことを認識せず、この有害作用を解消する為に別の薬剤を処方することを指す。
John Wilding教授は次のように述べています。「もし患者が血糖値を適切に管理していなければ、実際にはあまりにも多くの薬剤が処方され、適切に服用していないために別の薬剤が投与されることがあります。薬剤を服用することで、どのくらいの負担を有しているのか患者から引き出すことが重要です」


King’s Fund レポートによると、医薬品使用において多くの人々が最適なベネフィットを超えた、つまり過剰な医療を受けていた。治療を開始する時期について多くのアドバイスがあるが、治療を中止する決定を支援するための情報やエビデンスについては、はるかに少ないと指摘している。

長期的にのみ利益をもたらすであろう処方薬を一部の患者が依然として服用している場合がある(漫然投与)、これは人生の終わりに向かう上で特に懸念事項である。

 

Martin Duerdenは BMJに次のように語っています。「一般的に、医師が薬剤処方を止めることはあまりありません。代わりに薬剤を加える傾向があります。特に高齢のフレイル患者の場合、薬剤が真に有益であるかどうかを評価することが重要です。例えば、身体機能の低い老人ホームの患者は、数年以上生活することはないでしょう(つまり寿命は短いでしょう)が、スタチンを服用し続けても恩恵を受けることは恐らく無いでしょう。」

彼は「患者とその家族との間で全ての薬剤について服用(継続)あるいは使用中止について議論することが重要だ」と付け加えた。

 

King’s Fund レポートは患者の全体的ニーズを誰も考慮していない可能性があるため、医師の専門性向上に対処する必要があると報告している。つまり多併存疾患を有す患者は包括ケアをコーディネートできる一般臨床医にアクセスする必要があると説いている。また患者は疾患特有のクリニックを受診するのではなく、自身のケアコーディネーターである臨床チームによって、1度の診察で全ての長期的コンディションを見直されるのが理想である。

 

King’s Fund レポートは、患者の治療について情報に基づいた選択をすることができるように患者を関与させることが重要であると指摘している。多くの患者が不愉快な雑事として多数の薬剤を服用していることが分かり、これは QOLを損なう可能性がある。

いずれにしても患者は、処方医が意図する薬を服用しない場合が多く、処方薬剤の多くは未使用または無駄になる。投薬レジメンは可能な限りシンプルにするべきであり、1日1回または 2回投与するのが理想的である。

 

Martin Duerdenは “たとえこれが妥協を伴っても処方計画をどのように簡略化できるかを医師が見なければならない” と述べた。例えば、スタチンは就寝前に摂取するのが最善ですが、患者は他の薬剤とともに日中にスタチンを服用することが望ましいかもしれない。
King’s Fund レポート医薬品管理に関する実務的留意点を提供している。例えば医師は、患者が何を摂取しているか知っていると決めつけてはいけない。ハーブ製品や OTC薬を含む全ての持参薬について患者に訪ねるよう助言している。


Wildingは BMJに次のように語っています。「機会が生じる度に薬剤の数を合理化しようと試みることは、すべての医師における責任です。特定の薬剤処方理由は、患者によっては長く忘れられることがあり、場合によっては(処方)元の臨床医にも忘れられていることがあります。」

コメント

ポリファーマシーや処方カスケード、臨床試験結果の限界、ガイドラインの問題点、コンコーダンス等について考察されていた。処方薬剤の適正化は正に Evidence-based medicine(EBM)であると感じた。

 

本論文では医師と患者を中心に話が展開されていたが、薬剤師を含むコメディカルの協調は不可欠であり、これが医師の負担軽減、患者の不定愁訴発見等に繋がるのではないかと個人的には考えている。診断に基づき処方箋を発行する医師に、負担や責任が多くのしかかっている状況にあると感じているが実際はどうなのだろうか。患者に薬を直接渡している我々、薬剤師に責任が無い訳が無い。

 

現在ガイドラインは、推奨ではなく絶対的な治療方針のように扱われているが、ガイドラインに記載の無い困難な状況を打破するためには、論文情報が役立つことは言うまでもない。なぜならばガイドラインは一つ一つの臨床研究を総合的に評価、つまり論文化された多くの情報を基に構成されており、エキスパートコンセンサスを経て発行されているからだ。情報がまとまっている反面、世に出るまでに時間がかかり、情報が古くなっている可能性は大いにあり得る。

 

話は変わるが厚生労働省はファーマシー・テクニシャン導入を検討しており、そうすることで薬剤師をより専門的な業務に従事させようと考えているようです(右に倣えな気もしますが)。患者のための薬局ビジョンでも明文化されていましたが、薬剤師が求められていることは対人業務であって対物業務ではない。もしも対物業務に従事することに対して違和感を感じているのであれば、EBMを実践してみるのも一つの手です。

 

私は殊更に、あるいは積極的に “EBMを実践しましょう” とは言いません。しかし現状、薬剤師の武器の一つとして論文情報の活用、EBM実践を完全否定するのは難しいと感じています。EBMの 4つの輪や 5つのステップを意識することは、個別化医療の実現、PDCA サイクルを回すことであり、そこには予め用意された正解はありません。

 

情報は日々アップデートされています。昨日まで信じて行ってきた行為が、実は古いものであり、最悪の場合誤っていることもあります。論文を読み、これまで培ってきた知識や経験と合わせ、現在行える最適な医療とは何か、と今一度自身に問いかけてみてはどうでしょうか。

補足

King’s Fund:イングランドにある健康とケア改善を目的とする非営利団体。King’s Fund Report を刊行している。

95%信頼区間とは何ですか?(統計学ワード)

⌘ 背景

今更ながら “95%信頼区間” という言葉の定義を自分なりに理解したい。

⌘ 結論

95%信頼区間とは、95%の確率で母集団の平均を含む区間である。

 

 しかし、より正確には、仮に同じ臨床試験を 100回施行した場合、そのうち 5回くらいの結果は真の値を含まない平均値(点推定)を示す、ということである。

⌘ 解説

薬の効果と副作用を検討する際、世界中の全人類が臨床試験に参加することは不可能である。年齢や既往歴等の特徴で参加対象を絞ったとしても、その特徴を有す全員が参加することもまた現実的ではない。

 

 ではどうするのか?その問いの一つとして区間推定があげられる(以下のイメージ図を参照)。

 

 

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(点推定と 95%信頼区間のイメージ図)

 

 

 ある薬剤Aについて、評価項目(アウトカム)の発生数(イベント数)を計算しサンプルサイズ(標本数)を予め設定することで、全体(母集団)の平均値を推定しようとする試みである。サンプルサイズは過去の類似研究の結果を基に算出することが多い。

 

 臨床試験の結果は、ハザード比やリスク比、オッズ比 etc. で示される。

 

 例えば、ある臨床試験のアウトカムにおけるハザード比 =1.21 が点推定値であり、その 95%信頼区間 0.78-1.62が区間推定値である。

 

 つまり、ある臨床試験に参加した集団(標本)の平均値は 1.20であり、母集団(全人類)の平均値、つまり真の値を含んでいそうな区間が 0.78-1.62の範囲内に 95%の確率で存在している、ということである。

 

 より正しくは真の値に対して重きを置くので、100回施行したうちの 5%は真の値を含まない、という表現の方が良いのかもしれない。

 

 上記の解説はややこしいので「ある試験を 100回やったら 95回は同じ結果になるよ」で何ら問題ないと個人的には思う。

⌘ 参考資料

1. いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第1巻 まずは統計アレルギーを克服しよう! ISBN-10: 4904307240、ISBN-13: 978-4904307243(発売日: 2010/4/10)




 

海外のデータを日本人に当てはめて良いですか?

⌘ 背景

Evidence-Based Medicine(EBM)を実践しようと論文を読み始めたときに、ふと『海外のデータばかりだな、日本人に活用できるのかな?』と思った。

そんなとき私の尊敬しているある先生の言葉にいたく感銘を受けた。

 

以下、一部抜粋。

⌘ 海外データはそのまま日本人に使えない?

『質問者は海外データはそのまま日本人に使えない、ということを主張したいのでしょうか。それに対し私に何の反論もありません。その通りだと思います』

『しかし、ことさら人種差を持ち出すというところに違和感があります。人種差は個人差の一要素に過ぎません。男女でも違いますし年齢でも違います。細かい病態も個人個人で違います。その一要素として人種を考慮することは重要です』

『ただ、真っ先に人種差を問題にするというのはどうなんでしょうか。それは biasなのではないでしょうか。そう言いたいわけです。これをもう少し一般化すると情報の外的妥当性の吟味ということです』

『そもそも研究結果は研究に参加した平均的な人たちに対するものであって、個別の患者に適応する際には日本人のデータであろうが海外のデータであろうが個別的な適応、つまり外的妥当性があるデータなのか検討する必要があります。人種の問題は、そういう当たり前の問題にすぎません』

『エビデンスは、しょせん目の前の患者とは異なる集団での平均値に過ぎないのです』

⌘ 人種間のばらつきは、人種内のばらつきに比べればかなり小さい

人種間のばらつきは、人種内のばらつきに比べればかなり小さいというのが普通です。人種をことさら問題にするのは、こうした視点で考えてもナンセンスです』

⌘ コメント

いかがでしょうか。この言葉に触れた時からEBMの Step4の実施が肝であるなと考えています。

自分で自分のことを決定できる患者は少ないと思います。現時点における最良の意思決定の一助となれるよう論文を継続して読むことが肝要ではないでしょうか。

より良い、少しでも良い治療選択のためにエビデンスを活用し、患者と話し、医師と相談し、decision makingしていきたいと思います。

 

 

-Evidence never tells you what to do-




 

情報リテラシーとは?(アメリカ図書館協会; 1989)

情報リテラシーの定義は、1989年にアメリカ図書館協会が発表した最終報告書に記載されています。以下原文を一部翻訳。

情報リテラシーとは?

個人が「情報を必要とするときに、必要な情報を効果的に探し出し、評価し、使用する能力」を身につけるための能力のセットである。

 

▶️情報リテラシーは、急速な技術変化と情報資源の爆発的発展を遂げている現代において、益々重要になっている。この環境がさらに複雑化するにつれて、個人は、学術研究、職場、個人生活において、多様で豊富な情報の選択に直面している。

 

▶️情報は図書館、地域社会のリソース、特別利益団体、メディア、インターネットを通じて入手可能であり、情報はフィルタリングされていない形式で個人に提供されているため、真正性、妥当性、信頼性について疑問を投げかけられている。さらに情報は、グラフィカル、聴覚、およびテキストを含む複数の媒体を通じて入手可能であり、個人がそれを評価し、理解する際に新たな課題をもたらす。

 

情報リテラシーを学ぶとどうなる?

▶️不確実な品質と情報量の増大は、社会にとって大きな課題となっている。情報を効果的に使用するために必要な補完的な能力がなければ、つまり膨大な量の情報の入手だけでは、より情報に価値を見出す市民は生まれにくい。 情報リテラシーは、生涯学習の基礎を形成する。すべての分野、すべての学習環境、あらゆるレベルの教育に共通している。学習者はコンテンツをマスターし、調査を拡張し、より自主的になり、自分の学習をより強力に制御することができる。情報リテラシーを身につけた個人は以下6つのことが可能である:

①必要な情報の程度を決定する

②必要な情報に効果的かつ効率的にアクセスする

③情報とそのソースを批判的に評価する

④選択した情報をナレッジベースに組み込む

⑤情報を効果的に使用して特定の目的を達成する

⑥情報の使用を取り巻く経済的、法的、社会的問題を理解し、倫理的かつ合法的に情報にアクセスし使用する

 


原文(英語)

以下、原文の一部

Information Literacy Defined

Information literacy is a set of abilities requiring individuals to “recognize when information is needed and have the ability to locate, evaluate, and use effectively the needed information.” 1 Information literacy also is increasingly important in the contemporary environment of rapid technological change and proliferating information resources. Because of the escalating complexity of this environment, individuals are faced with diverse, abundant information choices–in their academic studies, in the workplace, and in their personal lives. Information is available through libraries, community resources, special interest organizations, media, and the Internet–and increasingly, information comes to individuals in unfiltered formats, raising questions about its authenticity, validity, and reliability. In addition, information is available through multiple media, including graphical, aural, and textual, and these pose new challenges for individuals in evaluating and understanding it. The uncertain quality and expanding quantity of information pose large challenges for society. The sheer abundance of information will not in itself create a more informed citizenry without a complementary cluster of abilities necessary to use information effectively.

Information literacy forms the basis for lifelong learning. It is common to all disciplines, to all learning environments, and to all levels of education. It enables learners to master content and extend their investigations, become more self-directed, and assume greater control over their own learning. An information literate individual is able to:

  • Determine the extent of information needed
  • Access the needed information effectively and efficiently
  • Evaluate information and its sources critically
  • Incorporate selected information into one’s knowledge base
  • Use information effectively to accomplish a specific purpose
  • Understand the economic, legal, and social issues surrounding the use of information, and access and use information ethically and legally

参考文献

1) http://www.ala.org/acrl/publications/whitepapers/presidential   — Last access date is 20171201.