パーキンソン病患者への制吐剤はプリンペラン®️とナウゼリン®️どちらが良さそうですか?(Br J Clin Pharmacol. 2018; Clin Drug Investig. 2016; Drug Saf. 2015)

ナウゼリン®️で死亡リスクが上がる?

私的背景

扁桃炎で苦しんでいたところ、SNSのタイムラインに衝撃の論文が流れてきました。なんとドンペリドン(ナウゼリン®️)使用でパーキンソン病患者の死亡リスクが上がっていたという報告。

あくまでも ”観察研究” であることを念頭におきながら早速読んでみました。また関連する論文についても合わせてご紹介します。

結論

ドンペリドンの使用は、死亡リスク増加と関連していた。またパーキンソン病単独因子による死亡リスク増加とは考えにくかった。従ってドンペリドン使用が死亡リスク増加と関連している可能性が高かった。しかし検討されたのものは観察研究ばかりであり、因果関係があるとまでは言えず、現在の薬剤使用を中止する理由とまではならないと考えられる(ハードアウトカムであるためリコールバイアスは少ないと考えられる)。

事実、母乳産生について検討した過去のランダム化比較試験では死亡リスク増加は認められなかった(PMID: 11202662221472872246179329469929)。ただし、過去の検討では観察期間が短い可能性が高い。より長期的なドンペリドン使用リスクについてランダム化比較試験で検討する必要があると考えられる。

QT延長については、ドンペリドンとケトコナゾール併用でのリスク増加が報告されている(PMID: 21883386)。これはCYP3A4が関与していると考えられた。

他薬剤があることから、リスク増加を承知でドンペリドンを使用する理由もないと考えられる。

同効薬であるメトクロプラミド(プリンペラン®️)の方が死亡リスク増加は少なさそうである。またプロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor, PPI)でも死亡リスク増加は少なさそうである。ただし、いずれも例数が少ないため、研究の質としては低く、βエラーの可能性が高い。それでもドンペリドン使用に比べ、メトクロプラミドやPPI使用は死亡リスクが低い。非常に重要な結果であると考えられる。

血液脳関門を通過するか否かという観点からは、メトクロプラミドよりドンペリドンの方が副作用は少なそうである。しかし臨床研究の結果ではハードアウトカムへの影響が懸念される結果であった。


コホート研究

Increased risk of all-cause mortality associated with domperidone use in Parkinson’s patients: a population-based cohort study in the UK.

Simeonova M et al.

Br J Clin Pharmacol. 2018 Jul 5. doi: 10.1111/bcp.13708. [Epub ahead of print]

PMID: 29975795

研究の目的

ドミペリドンは、パーキンソン病患者(Parkinson’s disease, PD)の消化器症状を治療するために使用されている。しかし同時に死亡リスク増大に結びついている。本研究ではPDにおけるドンペリドン曝露に関連する全原因死亡のリスクを調べようとした。

方法

Clinical Practice Research Datalinkデータベース(1987-2011)のデータを用いてコホート研究を実施した。最初に記録されたPD診断日をインデックス日と定義した。時間依存型Cox比例ハザードモデルは、ドンペリドン使用に関連する全死亡のハザード比(Hazard Retio, HR)を推定した。

PD患者は、ドンペリドンの使用(現在/最近/過去)によって層別化され、referentとしてはドンペリドンを一度も使用しない患者を設定した。現在のドンペリドン使用者は、1日(投与)量、ドンペリドン使用期間および他の抗パーキンソン病薬によって層別化された。二次的分析では、PD患者を非PD患者(1:1)と比較した。

結果

合計5,114人のPD患者が同定された。 PD患者における現在のドンペリドン使用は、ドンペリドンに暴露されなかった患者と比較して、全死亡リスクが2倍高かった(HRadj =2.00, 95%信頼区間[CI] 1.64〜2.45)。

全死亡リスクは、前月のドンペリドン投与開始群で最も高かった[HRadj = 2.97, 95%CI 2.06〜4.27]。マッチした非PD患者と比較した場合、PDは全死亡リスクが43%増加したが、現在ドンペリドンを使用しているPD患者のリスクは2.4倍に増加した。

結論

ドンペリドンの使用は、一度も使用していないPD患者と比較して、PD患者における死亡リスク2倍の増加と関連していた。このリスクは、使用の最初1ヶ月に最も高く、PD単独に起因するとは考えにくい。


システマティックレビュー&メタアナリシス

Domperidone and Risk of Ventricular Arrhythmia and Cardiac Death: A Systematic Review and Meta-analysis.

Leelakanok N et al.

Clin Drug Investig. 2016 Feb;36(2):97-107. doi: 10.1007/s40261-015-0360-0.

PMID: 26649742

研究の背景と目的

ドンペリドンは、吐き気や嘔吐を和らげ、母乳産生を刺激するために世界中で使用されている薬です。いくつかの症例報告および研究において、ドンペリドン使用と関連した主要な心血管有害事象(心臓不整脈および突然死)との関連性が示唆されている。しかし、複数のランダム化比較有効性試験では、そのような有害事象を検出することができなかった。本研究の目的は、現在のドンペリドン曝露と心血管有害事象との関連性を体系的にレビューし、メタ分析することであった。

方法

第一著者が、EMBASE、PubMedおよびScopus検索を行い、現在のドンペリドン曝露と心臓不整脈または突然死との関連性を評価するヒト研究を特定した。 13の関連文献が特定され、第1著者と第2著者が個別に記事をレビューした。最終的な分析には6つの研究が含まれていた。メタアナリシスは、逆分散アプローチを用いたランダム効果モデルを用いて行った。異質性は、Q統計および I2検定を使用して評価した。

結果

本メタ分析には、5件の症例対照研究と1件の症例 – 交叉研究が含まれていた。ドンペリドンの現在の使用は、心室性不整脈および突然死リスクを増加させることが実証された(プールされた調整オッズ比 =1.70; 95%信頼区間 1.47〜1.97; I2= 0%)。 I2試験は、基礎となる集団が均質であることを示した。

結論:
本メタアナリシスによるエビデンスは、現在のドンペリドン使用が心不整脈および突然死リスクを70%増加させることを示唆している。高齢者におけるドンペリドン使用は推奨されません。この分析の結果を確認(検証)するには、より大規模な観察研究またはランダム化比較試験が必要である。


コホート内症例対照研究

Risk of Out-of-Hospital Sudden Cardiac Death in Users of Domperidone, Proton Pump Inhibitors, or Metoclopramide: A Population-Based Nested Case-Control Study.

Arana A et al.

Drug Saf. 2015 Dec;38(12):1187-99. doi: 10.1007/s40264-015-0338-0.

PMID: 26350642

導入

疫学研究では、突然死を含む重篤な心不整脈とドンペリドンの併用が関連しているが、年齢、用量、および使用期間に関するデータは限られている。

研究の目的

本研究の目的は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、メトクロプラミド、ドンペリドンまたは3つ全ての薬物の非使用に対するドンペリドン使用に関連する病院外突然心臓死のリスク、およびドンペリドン投与量に関連した突然死および死亡を評価することであった。

方法

2005年から2011年の間にドンペリドン、PPI、またはメトクロプラミドの内1つ以上の処方データがClinical Practice Research Datalinkに登録されている2歳以上の被験者コホートベースの症例対照研究であった。外来患者での心臓死は、病院エピソード統計および死亡診断書との関連によって評価された。対照は、年齢、性別、および医療業務と一致させた。

PPIまたはメトクロプラミド使用者におけるリスクに対するドンペリドン使用者の突然死リスクを、多変量条件付ロジスティック回帰を用いて評価した。症例 – 交叉分析は、可能な残存交絡を扱った。

結果

研究コホート(n =681,104)から、3,239の突然死例と12,572対照に適合した。現時点でのドンペリドン単独使用による急性心臓死に対する調整オッズ比(95%信頼区間)は、薬剤非使用と比べ1.71(0.92〜3.18)、PPI使用と比べ1.26(0.68〜2.34)およびメトクロプラミド使用と比べ0.40(0.17〜0.94)。

ドミペリドン> 30mg /日(8例、対照5例)の試験薬無暴露に対するオッズ比(95%信頼区間)は3.20(0.59〜17.3)、61歳以上(27例、対照49例)で1.65(0.89〜3.07)であった。

コホート内ケースクロスオーバー分析では、ドンペリドン使用は、非使用と比較し、急性心臓死のオッズ比(95%信頼区間)は3.17(1.72〜5.83)であった。

結論

いずれの薬を使用しない場合と比較して、現在のドンペリドンの使用は、症例内対照研究および症例-交叉解析における突然死に関連し、高齢者およびより高い薬剤用量/日の使用者においてリスク高値が示唆された。

 

 

 

-Evidence never tells you what to do-




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