DPP-4阻害薬の使用は炎症性腸疾患を誘発しますか?①(BMJ 2018)

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and incidence of inflammatory bowel disease among patients with type 2 diabetes: population based cohort study.

Abrahami D et al.

BMJ. 2018 Mar 21;360:k872. doi: 10.1136/bmj.k872.

PMID: 29563098

背景

マウス炎症性腸疾患モデルに関する研究では、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬により疾患活性の低下をもたらすことが示唆されている。一方、臨床データでは炎症性腸疾患患者の血清 DPP-4濃度が低値であることも報告されている。

DPP-4阻害薬と炎症性腸疾患発症との因果関係は依然として不明である。そこで DPP-4阻害薬使用と炎症性腸疾患との関連についてコホート研究を実施した。

結論

DPP-4阻害薬の使用は炎症性腸疾患リスクの増加と関連していた(HR =1.75, 95%CI 1.22〜2.49)。

DPP-4阻害薬の使用期間が長くなるにつれ、炎症性疾患リスクは徐々に増加し、3〜4年使用後にピークに達し(HR =2.90, 1.31〜6.41)、4年以上使用した後は減少した(HR =1.45, 0.44〜4.76)。

感度分析においても同様のリスク増加が認められた。

しかしコホート研究のせいか効果推定値のキレが悪い。またDPP-4阻害薬単独治療においてはリスク増加は認められなかった。


組入基準

1988年1月1日〜2016年12月31日の間に非インスリン抗糖尿病薬(メトホルミン、スルホニルウレアSU、メグリチニド、チアゾリジンジオン、アカルボース、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬DPP-4i、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストGLP-1RA、およびナトリウムグルコース共輸送体-2インヒビターSGLT-2i)を新規に処方された18歳以上の患者。初回処方前に、CPRDにおいて少なくとも1年間のデータが記録されている患者。

ベースコホート内で2007年(最初のDPP-4i、シタグリプチンが英国市場に参入した年)以降に治療歴に使用されていなかった新しい抗糖尿病薬クラスで治療を開始した研究コホートを集めた。従って糖尿病に対し新規に治療開始された患者、ならびに治療方針が改変された患者(アドオンまたはスイッチ)が含まれた。コホートエントリーは、この新しい抗糖尿病処方箋の日付とした。

全患者はコホート組入6ヶ月以降、炎症性腸疾患、虚血性大腸炎または憩室炎のイベント診断、全死亡、一般診療の登録終了、または試験期間の終了(2017年6月30日)、いずれかの初発をエンドポイントとした。

除外基準

①インスリン使用者、②多嚢胞性卵巣症候群の既往女性(非インスリン抗糖尿病薬の初回処方前のいずれかの時点)、③妊娠糖尿病の既往(初回処方前の年)。

※②と③はメトホルミンの他の適応症であるため。

以前にメサラミンでの治療歴を有す炎症性腸疾患と診断された患者を、コホート組入前の任意の時点(クローン病および潰瘍性大腸炎; supplementary table Aに記載)から除外した。また、憩室炎、虚血性大腸炎、偽膜性大腸炎、または非特異的大腸炎(炎症性腸疾患の一般的な鑑別診断)の病歴を有す患者は、コホート組入前のいずれの時点でも除外した。コホート組入後6ヶ月未満の経過観察期間の患者および炎症性腸疾患の既知の診断遅延を除外した。


PECOTS

P:2型糖尿病患者

E:DPP-4阻害薬の使用

C:DPP-4阻害薬以外の経口血糖降下薬

O:炎症性腸疾患の発症(DPP-4i治療を6ヶ月以上有す)

T:前向きコホート研究、害、イギリス人口ベースのコホート研究、追跡期間 3.6年(中央値、四分位範囲1.6〜5.9)

S:1988年1月1日〜2016年12月31日の期間に組み入れ。follow upは2017年6月31日まで。イギリスのプライマリー・データベースである the Clinical Practice Research Datalink(CPRD)を使用。700以上の一般診療科のデータとリンクしている。


資金調達Funding

カナダ健康研究所の基金スキームの助成を受けて行われた。スポンサーは研究のデザインと実施(データの収集、管理、分析、解釈。原稿の作成、レビュー、または承認)に影響を与えなかった。

ADはドイツ研究財団(Deutsche Forschungsgemeinschaft、DFG)の研究フェローシップの受領者。 LAはFerry de Recherche duQuébecからChercheur-Boursierジュニア2賞を与えられた。SantéはMcGill大学のWilliam Dawson学者賞を受賞した。

競合する利益Competing Interests

過去3年間において本研究に関心を持つ可能性がある組織との財政関係は無かった。本研究に影響を与えたと思われる他の関係や活動は無い。


批判的吟味

結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?

無し

 

Outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか?

されていると判断した。一般人口データベースを使用しているため。

 

交絡因子の調整が行われているか?

次の6つについて調整した; ①年齢、②性別、③コホート組入年、④BMI、⑤アルコール関連障害(アルコール依存症、肝臓のアルコール性肝硬変、アルコール性肝炎および肝不全)および⑥喫煙状態。

コホート組入前のヘモグロビンA1c(コホート組入前の最終検査結果)、微小血管(腎症、神経障害、網膜症)および大血管(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈症)合併症、コホート組入前に使用されている抗糖尿病薬などを病気重症度のプロキシとして使用。


結果は?

コホートには141,170例が組み入れられた。552,413患者-年のフォローアップ期間中、炎症性腸疾患の発生は208であった。

 発生率incidence rate =37.7(95%CI 32.7〜43.1)/100,000患者-年

 

DPP-4阻害薬の使用は炎症性腸疾患リスクの75%増加と関連していた。

  53.4 vs 34.5 /100,000 /年

  HR =1.75(95%CI 1.22〜2.49

  NNH =2,291 /2年フォローアップ

  NNH =1,177 /4年フォローアップ

 

炎症性腸疾患リスク増加のピークはDPP-4阻害薬使用3〜4年であった。

  HR =2.90(95%CI 1.31〜6.41

 

コホート開始時から同様のパターンが観察された。コホート開始後2〜4年(HR =2.50, 1.57〜3.99)で最も高いハザード比が観察され、4年以上経過後にはリスクが低下した(HR =1.75, 0.86〜3.58)。これらのパターンは、cubic spine modelでも一貫していた(supplementary figures A and B参照)。

 

全体的に、DPP-4阻害薬の単独使用は炎症性腸疾患と統計的に関連していなかった。また各イベントは少なかった(supplementary table C参照)。炎症性腸疾患の層別化分析においてDPP-4阻害薬使用による各疾患のリスクは以下の通り;

  潰瘍性大腸炎 HR =2.23(95%CI 1.32〜3.76

  クローン病 HR =0.87(95%CI 0.37〜2.09

 

感度分析と付随分析において、主要分析の結果と一致する結果がもたらされ、統計的に有意なハザード比は1.60〜2.21の範囲であった。 インスリンの使用と他の抗糖尿病薬の使用を比較するネガティブコントロール分析では、ナル値に近いハザード比(HR =0.92, 0.53〜1.58; Table 3参照)をもたらした。

 

直接比較において、DPP-4阻害薬使用はインスリンと比較し、炎症性腸疾患リスクと関連していた。

  HR =2.28(95%CI 1.07〜4.85


コメント

DPP-4阻害薬使用により炎症性腸疾患リスクの増加が認められた。各疾患との関連性についてDPP-4阻害薬使用は、潰瘍性大腸炎リスクを有意に増加させたが、クローン病については有意ではなかった。インスリンと比較してもDPP-4阻害薬は有意に炎症性腸疾患のリスクを増加させた。DPP-4阻害薬以外の糖尿病治療薬については、インスリンと同等のリスクであった。

しかし、どの結果をみても効果推定値はあまり良くない。さらにDPP-4阻害薬による単独使用は炎症性腸疾患リスクを増加させなかった。つまり併用療法をする上では炎症性腸疾患リスクを増加させるかもしれないということ。論文タイトルおよびアブストの書き方に悪意がある気がする。

また観察研究であるため、あくまで相関関係であり因果関係とまでは言えない。また過去の報告では、DPP-4阻害薬使用が炎症性疾患リスクを減少させるとの報告もある。こちらについては次回。

 

 

 

-Evidence never tells you what to do-




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