【コレステロールを下げた方が良いのはダレか?】プラバスタチンは脂質異常症の日本人患者における冠動脈疾患初発を予防できますか?(MEGA study; Lancet 2006)

Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA study): a prospective randomised controlled trial.

Nakamura H et al.

Lancet. 2006; 368: 1155-63.

PMID: 17011942

私的背景

ひょんな事から再度、本文献を読む必要が出てきた。

日本人を対象としたプラバスタチンの効果を検証した貴重な試験である。さらに群間差を検出しづらい1次予防。アウトカムにはハードなものも含まれている。PROBE法とエンドポイントの組み合わせについて知るには非常に良い試験である。試験結果は如何なものか、再度、批判的吟味していきたい。

結論

冠動脈疾患あるいは脳卒中既往の無い日本人を対象としたプラバスタチン(10-20 mg/日)の使用は、冠動脈疾患の初発を有意に抑制した。しかし本試験はオープンラベルかつ複合エンドポイントである。複合エンドポイントには狭心症や冠動脈再建術など、バイアスがかかりやすいソフトエンドポイントを含んでいる点には注意が必要である。さらにプラセボ対象では無い。


PICOTS

P:体重40kg以上の男性(40〜70歳)および閉経後の女性(〜70歳)

I :NCEP step Iに基づく食事療法+プラバスタチン10〜20 mg/日

C:NCEP step Iに基づく食事療法

O:Primary — CHD初発(CHDに含まれた疾患:致死性あるいは非致死性心筋梗塞、狭心症、心突然死、冠血行再建術

  Secondary — 脳卒中、CHD+脳梗塞、心血管イベント、総死亡

T:治療・予防、PROBE法(前向き、ランダム化、オープンラベル、エンドポイント評価者はブラインド)

S:多施設(日本の924施設)、対象は日本人のみ


批判的吟味

研究デザインは?ランダム化されているか?

ランダム化されている

ランダム割付が隠蔽化されているか?(selection bias は無いか?)

されていると判断した。

コンピューターを用いてブロックランダム化を行なっている。しかしブロックランダム化の中でもパーミューテーション法を用いているため、2名1組の場合ランダム化が崩れる可能性が高い。実際のブロックランダム化の方法については不明。デザインペーパーにも記載無し。

ただ通常は4あるいは8名を1ブロックとするため問題は無いと考えられる。

マスキングされているか?(ブラインドか否か?)

オープンラベル。エンドポイント評価者のみブラインド

プライマリーアウトカムは真か?

真だが注意点あり。

複合アウトカムであり、オープンラベルでバイアスがかかりやすいソフトエンドポイントを含んでいる

交絡因子は網羅的に検討されているか?

概ね検討されている

Baseline は同等か?

ほぼ同等

ITT 解析されているか?

正確には一度も治療を受けなかった(治療データ)の無かった64名がランダム化後に除外されているためFASである

追跡期間は?

平均5.3年

サンプルサイズは充分か?

1次アウトカムに有意差があるため充分。ランダム化後に約21%(168例)の脱落があったが、想定の範囲内であると判断した。

5,6イベント/1000人/年の致死的および非致死CHDが、食事療法群で10%および食事療法+プラバスタチン群で40%低下を仮定。

20%脱落を想定し、パワー80%、α=0.10(両側)で計算したサンプルサイズは8000人であった。

 


結果は?

プライマリーエンドポイント

ハザード比(95%CI) 絶対リスク減少 NNT
CHD 0.67(0.49-0.91) -0.84 120

CHD =Coronary Heart Disease

ITT =Intention To Treat

NNT =Number Needed to Treat

 

セカンダリーエンドポイント

ハザード比(95%CI) 絶対リスク減少 NNT
脳卒中 0.83(0.57-1.21) -0.27 371
CHD+脳梗塞 0.67(0.49-0.91) -1.10 92
心血管イベント 0.74(0.59-0.94) -1.10 91
総死亡 0.72(0.51-1.01) -0.57 176

ちなみに心筋梗塞は、

  HR =0.52(0.29〜0.94)

  ARR =-0.39

  NNT =256

 

有害作用

食事療法群

イベント数(%)

食事療法+プラバスタチン群

イベント数(%)

ASTおよびALT

(100 IU/L超)

55(1.4),

104(2.8)

50 (1.3) ,

107(2.8)

クレアチンキナーゼ

(500 IU/L超)

96(2.6) 111(3.1)
心血管イベント以外の死亡 61(2.9) 44(2.2)

重篤な有害事象について、両群間で差は認められなかった(data not shown)。

横紋筋融解症について、両群間で差は認められなかった(data not shown)。


コメント

論文の読み方を学ぶ題材としては最適です。

正直、結果は微妙。ソフトアウトカムの群間差が大きく結果を引張っています(Figure 2参照)。この結果をもってして脂質異常症(高コレステロール血症)の日本人における冠動脈疾患の1次予防にプラバスタチンを積極的に使用しようとは思わない。

心筋梗塞の家族歴を有す患者で、かつ高血圧症や糖尿病等の併存疾患がある場合は使用しても良いかもしれない。NNT =256をどのように捉えるのかに寄るのかもしれない。

 

 

 

-Evidence never tells you what to do-




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