駆出率の差異により心不全の死亡率に違いはありますか?(Eur Heart J. 2018;Free)

Mortality associated with heart failure with preserved vs. reduced ejection fraction in a prospective international multi-ethnic cohort study.

Eur Heart J. 2018 Jan 29.

Lam CSP et al.

PMID: 29390051

トライアル登録番号: ACTRN12610000374066

背景

いくつかの疫学的研究で報告されているように、左室駆出率 40〜49%の保存期(heart failure with preserved ejection fraction:HFpEF)または mid-range駆出率(heart failure with mid-range ejection fraction:HFmrEF)を有する心不全患者の有病率および死亡率は、駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)と同様であるが、依然として議論の余地が大きい。

そこで前向き的かつ国際的な多民族人口における HFpEF、HFmREFおよび HFrEF患者の特徴およびアウトカムを比較した。

結論

シンガポールとニュージランドのコホートデータにおいて、HFpEFの有病率は HFrEFよりも低かった。

死亡率は HFpEFおよび HFmrEFにおいて同等であり、HFrEFにおいてより低かった。

血漿 NT-proBNPレベルは、心不全の各表現型における死亡率を独立かつ同様に予測できる因子であった。


組入基準

組み入れ期間中に病院で心不全と診断された患者(急性心不全の安定化後に評価; ニュージーランド70%、シンガポール61%)、6ヶ月以内の非代償性心不全のエピソードを有す外来患者(入院あるいは外来での治療が必要;ニュージーランド30%、シンガポール39%)。

除外基準

重症弁疾患、急性冠症候群を原疾患とする一過性肺水腫、末期腎不全、寿命が 1年未満の生命を脅かすような併存疾患を有す患者、特定の心不全亜型を有す患者(狭窄性心膜炎、先天性心疾患、肥大性心筋症、心アミロイド、化学療法に関連した心筋症)、試験参加の同意がとれない患者。

 


PECOT

 

P:18歳以上の 2012 European Society of Cardiology criteriaを満たす心不全患者

EHFrEF, 駆出率 <40%

CHFmrEF, 駆出率 40〜49%

    HFpEF, 駆出率 ≧50%

O:死亡率、心不全による入院

T:前向きコホート研究、予後、Follow-upは 2年、ニュージーランドの 4施設・シンガポールの 6施設

 


批判的吟味

追跡期間はどのくらいか?

2年

脱落は結果に影響を及ぼすほどか?

概ね問題ないと判断した。

 

表1.  死亡率における患者数の変化(本文より筆者作成)

駆出率 試験開始時の患者数 追跡 2年後の患者数 追跡率

HFrEF,

駆出率 <40%

1209 976 80.7%

HFmrEF,

駆出率 40〜49%

256 226 88.3%

HFpEF, 

駆出率 50%

574 494 86.1% 

 

アウトカム観察者はブラインドされているか?

記載なし。

死亡率についてはハードアウトカムであるため影響はないと考えられる。しかし心不全による入院についてはソフトアウトカムであるため注意したい。

ちなみに試験からの組み入れ中止時は駆出率についてブラインドされていた。

交絡因子の調整は?

主要アウトカムの分析については、多変量解析(多重比較)は行われなかった。

ベースライン変数は、連続変数の分散分析と、可能であれば正確なカテゴリ変数の比率について v2検定を用いて比較した。
ベースラインNT-proBNPの独立した予測因子を決定するために従属変数としてlog(NT-proBNP)を用い、専門的臨床判断に基づいて選択された変数を組み込んだ複数の線形回帰を使用した(年齢、性別、高血圧および糖尿病の病歴、 心房細動、収縮期血圧、心拍数、log(クレアチニン)、LVEDD / BSA、LAvol / BSA、およびRWT。

→本文から傾向スコアマッチングと推測。

全死亡 343 /調整因子10 =34.4と 8以上であるためバイアスが生じやすいと考えられる。


結果は?

Figure 2. 各群のハザードプロット(本文より引用)

 

各駆出率の割合

・HFrEF(駆出率 <40%):1209(59%) [ニュージーランド 476(51%)、シンガポール 733(67%)]

・HFmrEF(駆出率 40〜49%):256(13%)

・HFpEF駆出率 ≧50%):574例(28%) [ニュージーランド 331例(35%)、シンガポール 243例(22%)

NT-proBNP25th, 75th パーセンタイル)

・HFrEF(駆出率 <40%):2195 (1040, 4548) pg/mL

・HFmrEF(駆出率 40〜49%):1532 (627, 2784) pg/mL

・HFpEF駆出率 ≧50%):1184 (482, 2441) pg/mL

全死亡

2年間の追跡期間中、死亡したのは 343例(17%)[シンガポール 161/1098(15%)、ニュージーランド 182/941 (19%)]

・HFrEF(駆出率 <40%):233例(19%)、109(95%CI 96〜124)/1000-patient years

・HFmrEF(駆出率 40〜49%):30例(12%)、63(95%CI 43〜88)/1000-patient years

・HFpEF駆出率 ≧50%):80(14%)、75(95%CI 60〜93) deaths/1000-patient years

全死亡+心不全による入院

2年間の追跡期間中、死亡あるいは心不全で入院したのは 824例(40%)[HFpEF 199(35%)、HFmrEF 103(40%)、HFpEF 522 (43%)]

最終的な解析モデルに薬剤(ACEI / ARB、ベータブロッカー)および前心不全入院歴を追加した場合、心不全による入院既往のある患者は、高リスクであった(HR =1.3, 95%CI 1.10〜1.54; P = 0.0013)。

一方、ベースラインで βブロッカーを服用している患者は、死亡または再入院のリスクが低かった(HR =0.66, 95%CI 0.54〜0.78; P <0.0001)。

 

表2. 各群の患者背景(本文 Supplementary Table 1より作成)

  New Zealand Singapore
  HFpEF

(LVEF >=50%)

HFmrEF

(LVEF 40-49%)

HFrEF

(LVEF < 40%)

HFpEF

(LVEF >=50%)

HFmrEF

(LVEF 40-49%)

HFrEF

(LVEF < 40%)

N 331 (35%) 134 (14%) 476 (51%) 243 (22%) 122 (11%) 733 (67%)
Age 73.9 (11.5) 67.7 (12.9) 65.9 (14.5) 68.3 (11.4) 63.6 (12.2) 59.7 (11.6)
Women 147 (44%) 38 (28%) 98 (21%) 127 (52.2%) 39 (32%) 102 (14%)
Ethnicity
NZ European 259 (78%) 91 (68%) 310 (65%) 0 0 0
Maori 37 (11%) 22 (16%) 103 (22%) 0 0 0
Pacific 20 (6%) 16 (12%) 47 (10%) 0 0 0
Chinese 5 (2%) 0 2 (0.4%) 152 (63%) 74 (61%) 444 (61%)
Malay 0 0 0 67 (27%) 35 (29%) 194 (26%)
Indian 7 (2%) 2 (2%) 12 (3%) 21 (9%) 11 (9%) 88 (12%)
Other 3 (1%) 3 (2%) 2 (0.4%) 3 (1%) 2 (2%) 7 (1%)
Medical History
Prior CAD 157 (47%) 69 (51%) 231 (49%) 79 (33%) 65 (53%) 431 (59%)
Prior MI 92 (28%) 49 (37%) 159 (33%) 28 (12% 29 (24%) 222 (30%)
Prior PCI 53 (16%) 27 (20%) 66 (14%) 28 (12%) 26 (21%) 160 (22%)
Prior CABG 72 (22%) 29 (22%) 97 (20%) 25 (10%) 21 (17%) 120 (16%)
Hypertension 239 (72%) 97 (72%) 261 (55%) 208 (86%) 96 (79%) 482 (66%)
Diabetes 118 (36%) 50 (37%) 134 (28%) 143 (59%) 63 (52%) 418 (57%)
Stroke 52 (16%) 19 (14%) 67 (14%) 26 (11%) 13 (11%) 81 (11%)
COPD 101 (31%) 40 (30%) 109 (23%) 17 (7%) 14 (11%) 62 (8.5%)
HF History
Ischaemic aetiology 142 (43%) 64 (48%) 211 (44%) 108 (44%) 73 (60%) 486 (66%)
Prior hosp adm for HF 131 (40%) 58 (43%) 201 (42%) 121 (50%) 74 (61%) 477 (65%)
HF device-therapies
ICD 3 (1%) 3 (2.2%) 25 (5.3%) 0 1 (2.3%) 43 (6%)
CRT-D 1 (0.3%) 2 (1.5%) 11 (2.3%) 0 0 11 (1.5%)
CRT-P 4 (1%) 0 7 (1.5%) 0 2 (1.6%) 4 (0.6%)
AF* 218 (66%) 85 (63%) 259 (54%) 78 (32%) 41 (34%) 142 (19%)
LBBB 43 (13%) 30 (22%) 140 (29%) 3 (1%) 8 (6.6%) 68 (9%)
Medications
ACE inhibitor/ARB 79% 87% 89% 77% 89% 84%
Beta-blocker 77% 81% 86% 81% 85% 89%
Loop diuretic 90% 96% 95% 80% 84% 92%
Spironolactone 13% 31% 43% 12% 32% 56%
Anticoagulant 44% 43% 40% 12% 13% 17%
Antiplatelet 55% 57% 54% 21% 25% 26%
Statin 58% 69% 57% 86% 82% 83%
Total medications, N 7 (5,8) 7 (6, 8) 7 (5, 8) 8 (6,9) 8 (6,9) 8 (7,9)
Clinical status
NYHA class, % 16/50/29/5 14/50/27/7 20/42/30/7 23/60/12/1 25/65/9/1 25/64/75/2
MLWHF score 41.1 (23.0) 46.6 (25.6) 47.8 (25.0) 30.4 (20.2) 28.0 (22.3) 33.6 (22.8)
Heart rate, bpm 70 (13.4) 72 (13) 74 (14) 72 (13.2) 74 (13.0) 78 (13.9)
SBP, mmHg 128 (22.1) 124 (22.0) 116 (19.3) 134 (21.6) 136 (26) 121 (20)
DBP, mmHg 72 (12.0) 74 (13.0) 71 (12.0) 70 (12.3) 72 (14.5) 71 (12.8)
Height, m 1.68 (0.1) 1.70 (0.09) 1.72 (0.09) 1.58 (0.08) 1.61 (0.09) 1.64 (0.08)
Weight, kg 86.8 (23.4) 94.1 (26.7) 88.1 (24.8) 69.5 (15.3) 69.7 (16.3) 69.4 (15.9)
Laboratory variables
Creatinine, micromol/L 109 (87, 143) 101 (88, 129) 106 (89, 134) 104 (79, 138) 102 (79, 139) 104.5 (86, 131)
Sodium, mmol/L 140 (138, 142) 140 (138, 142) 139 (137, 141) 139 (137, 141) 139 (136, 141) 138 (136, 140)
Haemoglobin, g/dL 128 (114, 142) 135 (124, 146) 138 (125, 149) 118 (101, 133) 127 (112, 140) 134 (119, 147)
NT-proBNP, pg/mL 1350 (571, 2462) 1545 (697, 2569) 2057 (1012, 4242) 1004 (345, 2385) 1532 (578, 3035) 2527 (1249, 5825)
Echo data
LVEDVi, ml/m2 50 (39, 67) 75 (58, 91) 96 (76, 117) 47 (37, 57) 65 (53, 74) 89 (72, 113)
LVESVi, ml/m2 20 (14, 27) 42 (32, 52) 68 (53, 86) 19 (14, 25) 36 (30, 43) 66 (51, 87)
LVEF, % 61 (57, 65) 44 (42, 46) 28 (23, 34) 59 (55, 63) 44 (41, 47) 25 (20, 30)
LAvoli, ml/m2 49 (37, 64) 49 (39, 60) 55 (42, 68) 34 (26, 52) 36 (28, 53) 41 (31, 54)
E/e’ average 13 (10, 16) 12 (9, 17) 14 (11, 19) 13 (10, 17) 15 (12, 19) 17 (13, 22)
Number of deaths 56 (17%) 18 (13%) 108 (23%) 24 (9.9%) 12 (9.8%) 125 (17%)

 


コメント

駆出率 50%以上に保たれている心不全患者(HFpEF)の方が、駆出率が低い心不全患者(HFmrEF、HFrEF)より死亡率が高いという結果であった。個人的なイメージでは駆出率が低下するほど死亡リスクが高いと思っていた。本結果はおそらく他併存疾患による死亡リスク上昇によるものと考えられる。こちらについては、さらに文献検索を行っていく。

またサブ解析ではあるが、βブロッカー使用者では死亡リスクが低かった。やはり基本は心不全の治療ということでしょうか。

続報を待ちたい。

 

 

 

-Evidence never tells you what to do-




👇 ポチッていただけますと喜びます。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です