メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ)

背景・疑問

今日までメトホルミンによる 2型糖尿病患者の死亡や心血管イベント発生の抑制効果が示唆されている。またアメリカやイギリスでは、年齢や腎機能に関わらず第一選択薬として位置づけられている。

 

 「果たして日本人での効果はどのくらいなのか?」という観点から、まずは日常業務での薬剤活用を意識し代用のアウトカムであるヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c ;HbA1c)低下作用と 肥満指数(Body Mass Index ;BMI)との関係性について明らかにする。以下の資料を基に ”薬を使う前提” で話を進める。

 

メトグルコ®(一般名:メトホルミン塩酸塩)国内承認申請資料  

 試験名:SMP-862の 2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験

 (http://www.clinicaltrials.jp/user/cteDetail.jsp

 結論

日本人 2型糖尿病患者を対象としたメトホルミンの血糖降下作用は、BMIに関係なく一定の効果を示した。さらに本結果は標準治療への Add-onではなく、メトホルミン単独使用によるものである。しかし小規模試験であるためか各値の標準偏差が大きいことは念頭に置いておく必要がある。また元データは未公開であるため批判的吟味が難しい。

BMI(kg/m2   HbA1c(%)

・  〜19.9 —   -1.33% (n= 4)

・20.0〜24.9 —   -1.24% (n= 36)

・25.0〜29.9 —   -1.38% (n= 28)

・30.0〜34.9 — -1.19% (n= 8)

・35.0〜     —     -1.70%(n= 4)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 


試験適格基準

<選択基準>
2型糖尿病で以下の基準を満たす患者
・食事療法・運動療法のみで治療中の患者
・HbA1cが 6.5%以上 12.0%未満で、4週間以上にわたって安定している患者
・20歳以上 75歳未満の男女
・外来患者
 など

<除外基準>
・肝機能障害患者
・腎機能障害患者
・心血管系、肺機能に高度の障害のある患者、その他の低酸素血症を伴いやすい状態の患者
・乳酸アシドーシスの既往を有する患者
・脱水症の患者、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
 など

年齢: 20歳以上 74歳以下
性別: 男女


 

批判的吟味

PICOT

 P:食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な 2型糖尿病患者

 I :メトホルミン塩酸塩 750 mg/日(107例)

    メトホルミン塩酸塩 1500 mg/日(106例)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 C:プラセボ群(55例)

 O:HbA1cなど(おそらくサロゲートマーカーのみ)

 T:プラセボ対照二重盲検、並行群間比較、動的割付、14週間の follow-up、施設は日本国内のみ

 

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

 → されている。動的割付だが詳細な因子は不明。ちなみに今回の場合、HbA1cが対象になっているとマズい。

 

ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

 → されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする

 

隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

 →不明

 

プライマリーアウトカムは真か?明確か?

 →代用のアウトカムだが読み進める。アウトカムとして HbA1cは明確だが、その他は不明

 

交絡因子は網羅的に検討されているか?

 →不明

 

Baseline は同等か?どんな患者背景?

 →不明。食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な患者ということだけ既知

 

ITT 解析されているか?

 → 不明だが、HbA1cについてはされていない。

  

追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

 →憶測でしかないが、メトホルミン群における HbA1cについては、追跡率 68.4%(31.6%)と、脱落が多い印象。 そもそもの解析方法が不明なため、これ以上の検証は行わない。

 

サンプルサイズは充分か?

 →不明

 

結果は?

 →上記、結論の項を参照


コメント

論文を毛嫌いする友人のために始めてみましたが、このシリーズ需要あるのか心配。とりあえず自分用のメモとして継続しようと思います。

 メトホルミンの血糖降下作用について「他の経口血糖降下薬と比較して弱い」と感じている方もいるようですが、その原因として投与用量が少ないことと、アドヒアランスが低下してしまうことが主であると考えられます。今回の試験の場合、用量 1500 mg/日により BMIに依存せず血糖降下作用が得られています。

 上記の問題については “投薬開始時のコツ” で回避できますので今後、取り上げていきます。

 

   - Evidence never tells you what to do –